幻覚と悪夢(家庭教師ヒットマンREBORN!)
槍の砕ける音、女の悲鳴、凹む女の腹。
力なく横たえるクローム髑髏を見下ろし、マーモンは己の勝利を確信した。
霧の守護者の戦い。指輪をかけた殺し合い。
呪われた赤子、アルコバレーノの一人である自分が本気を出せば、並みの術士など足元にも及ばない。
さて勝利の報酬をどれだけボスに払わせようか、と思い始めたその時、倒れていたクロームの身体を包むように、霧が噴出した。
「霧が娘をつつんでいくぞ!」
「なーに、最後の力を振り絞って自分の醜い死体を隠そうとする…女術士によくある行動パターンさ」
上がる驚きの声にも、培った経験から軽く返して霧を見据えた。
やがて霧が娘の槍をかき消し、眼帯の下の瞳が『六』を表したその時。
「クフフ…」
笑うような男の声。バトルステージである体育館に溢れかえる閃光と衝撃。
宙に浮いたままの身を吹き飛ばされ、バン!と体育館の壁に激突し、マーモンは足をついた。
「ムム…あれで終わりじゃなかったのかい…?」
立ち上がると、視点がいつもの二倍以上に高いことに気付き、声が止まる。
まさか今の衝撃でおしゃぶりが壊れたのか、とアルコバレーノの証である胸元のそれに手を伸ばし、おしゃぶりの無事を確認すると同時に、自分の身体を見下ろした。
(……成長、してる…?)
慌てて幻術で目の前に鏡を作り出せば、そこには8、9歳であろうか、育ちかけの身体を持つ子供が、浮かび上がっていた。
目深に被ったフードは赤ん坊の頃そのままに、服は今の身体に合わせて大きくなっている。
「…随分と、悪趣味な幻覚をかけてくれるんだね」
言いようの無い苛立ちに鏡を割り消し、晴れてゆく霧の中に立つ男を睨み付ける。
クローム髑髏と名乗った少女が居た場所には、彼女と同じ髪型の男が立っていた。
「おや…お気に召しませんでしたか?」
「気に入るわけがないよ。気分を害した賠償をして欲しいくらいさ」
口元に手を当てておかしげに笑う男に、マーモンは苛立ちを隠さぬ声を投げつけた。
その間にも、男から感じるぴりぴりとした気。
成る程、この男が女の本体であり、恐らくは本物の霧の守護者か。
そう確信したマーモンは手をかざし、男を一気に石にしてしまおうと、幻術をかけた。
かざした手の下の床がぴきぴきと音を立てて固まり、石の波が男へ迫る。
だが、波は男を飲み込むことなく、クフ、という男の笑い声ひとつで、砕けて消えた。
「な…」
「クフフ…先ほど貴方がご丁寧に説明してくれたじゃありませんか…
”幻覚とは人の知覚、即ち五感を司る脳を支配するということ。
術士の能力が高ければ高いほど支配力は強く、術にかかる確率も高まりより現実感をもつ”」
まさか、と。
言葉にならない焦燥感が、マーモンの背筋を駆け抜けた。
今までの殺し合いの中で、自分の幻術を超えた術士など一人も居ない。
呪われた赤ん坊である自分が、普通の人間の術士に負けるはずもない。
なのに、焦燥感は消えることなく、落ち着かない身体を駆け上ってくる。
もう一度、と空に翻した腕を後ろから”何か”に掴まれた。
「ムム、っ!!?」
ぐん、と持ち上げられ、両腕を戒められ、宙吊りにさせられる。
どんなに今の状況から幻覚で逃げ出そうとしても、”何か”はびくとも動かなかった。
「”そして術士にとって幻術を幻術で返されるということは、
知覚のコントロール権を完全に奪われたことを示している”…でしたっけ?」
「…僕を成長させた時かい?」
いつ幻術を返した、という言外の問いかけに、男はまたおかしそうに笑った。
子供の疑問に答える教師のように、明朗な声で、優しくも聞こえる言葉で答える。
「それより前です。何せ、君がぶつかった壁は、僕の作り出した幻覚なのですから」
チッ、とマーモンは舌打ちをし、顔を顰めた。
壁にぶつかったことを知覚してしまった己の愚かさに、眉をひそめる。
見上げる男の右目に、『六』の文字が今一度鮮やかに浮かび上がる。
それと同時に腕を戒めていた”何か”が、その数を増やしマーモンの身体を締め付け始めた。
僅かに視界に入ったそれは、先程マーモンがクロームに放った触手だった。
「クフフ…申し遅れましたね。我が名は六道骸。
貴方にさして恨みはなかったのですが…可愛いクロームを傷つけた罪、受けていただきます」
「六道…エストラーネオの六道眼の持ち主かい?」
ならば呪われた赤子である自分の忌まわしい力とも同等か、と
徐々に感じる息苦しさに表情を曇らせながら、吊り上げられたままの体勢で骸を見下ろした。
「おや、随分と余裕があるようですね…ご自分の身体の異変に、まだ気付きませんか?」
「異変…?ふ、あっ!?」
成長させたのはお前じゃないか、と皮肉を返してやろうと思った口から、その言葉は出なかった。
ヴァリアーの揃いのコートの下に入り込んだ触手が太腿と腹を撫でた刹那、
自分でも全く予想していなかった声がこぼれ、マーモンは思わず眼を見開いた。
自覚する事は幻覚に落ちる事と解っていながら、確かめる手段は他にない。
眼をきゅっと閉じ、感覚として己の身体を確かめてから、喉の奥から、くっと笑ってみせた。
「悪趣味にも程があるね…僕を女にするなんて」
女?と、呟きが外野からこぼれた。
その声を耳にして、ようやっとこの戦いが互いの陣営の目の前で行われている事をマーモンは思い出し、急に妙な羞恥を感じ、きゅっと唇を閉じた。
だが、服の下に入り込み身体を這いずる触手の動きに、今まで考えた事も無かった
感覚と声を誘い出され、甘い呻き声が閉じた唇から滲み出る。
「何とでも…それよりいかがですか?本来なら一生知るはずの無い快楽に流される気分は…」
骸が僅かに指を動かすと、触手は更に服の奥深く、胸や腋へと昇ってきてしゅるしゅると肌を滑り上がり、くすぶるような刺激を与え続けている。
声を押し殺していたマーモンだったが、不意に触手のひとつが、膨らみかけの幼い胸の先端…まだ薄い桜色の突起を、ぴん、と刺激した。
「っひゃ、あ…!」
自分でも信じられないような少女の声に羞恥を覚え、きゅっと唇を噛みなおす。
だが、そんなマーモンを嘲笑うかのように、触手は僅かに立ち上がった乳首を幾度もつつき、擦り上げ、絶えず快楽を押し付けていた。
やがて太腿を摩っていた触手はズボン越しに幼い秘所を擦り始め、形容しようもない感覚と否定できない快感に、噛み締めた唇からは堪えた声がこぼれ続けた。
「ぁ、あっ…嫌、やだぁ…」
びくん、と吊り上げられた身体が跳ねた。
足をもぞもぞと動かし、必死に快楽をやり過ごそうとする幼い身体を、触手は容赦無く責め立てる。
しゅ、しゅっ、とズボンと触手が擦れあう度、ぞくぞくと背筋を駆け上る何か。
耐え切れずに足を閉じれば、別の触手に絡め取られ、抵抗することを許されない。
「いい声ですね…ですが、もっと鳴いてくれないと、僕の気が済みません」
ぴた、と触手の動きが一斉に止まり、マーモンは息を落ち着けようと深く呼吸をした。
はぁー、はぁー…という震えた深い吐息が、幾度も体育館に静かに響く。
年端も行かないような幼い少女が見せる痴態に、誰も言葉を上げる事が出来なかった。
止めなければ。そう思うツナでさえ、目の前の光景に圧倒され口を開く事すらままならない。
幾本もの触手に宙吊りにさせられた幼女を責め立てて楽しむ六道骸。
まるで自分たちが喋らないことさえ幻覚の一部のように思える中、責め苦は再開された。
「ん、ぅ、あぁっ」
適度な硬度で胸先を責めていた触手が、粘度を纏い先端を幾本にも裂いた。
ねとり、と蛸などの軟体動物の手足で責められるような感覚に、マーモンは嬌声を上げた。
裂けた先で触れられ、硬くなったそこを摘まれ、軽く引っ張り上げられる。
「ひ、っ…!」
きゅうと引っ張られる乳首に、思わず悲鳴のような声が毀れた。
知らないはずの快楽に刺激され、支配され、頭の中がどろどろに溶けていきそうな感覚。
理性と意識で必死にそれに抵抗しようとするマーモンを、更に攻め立てようと触手が蠢いた。
カチャ、とズボンの金具が外される音と、僅かな布ずれの音。
コートに入り込んだ触手は乱暴にボタンを引きちぎり、やがて幼いその肢体が外気に晒される。
フードとマントはそのままに、肩口から股間までを仲間の、そして敵の前に露にされ、マーモンはフードの下で泣きそうに目を細め、それでも屈辱に耐えようと骸を睨み付けた。
例え幻覚で作り上げられた体であろうと、女であることを意識してしまえば、違うとは思いたくても、自らの全てを女だと知覚させられてしまう。
意識さえそう染め上げられた中で、マーモンはただこの悪夢と呼べる幻覚が終わるのを待つしかなかった。
触手は露になった胸先を益々攻め立て、好き勝手に刺激を与えていた。
「んく、ふ、あ…」
びくびくと身体を震わせながら零す嬌声に、頭が霞がかったようにぼんやりとしていく。
やがてズボンを剥ぎ取られ足を絡め取る触手がその角度を拡げれば、毛も生えていない、割れ目さえ未成熟な秘所がさらされ、骸はくつくつと笑い声を上げた。
「おやおや…随分と厭らしい子ですね…そんなに濡らして、良かったですか?」
「ひッ…あ、う…」
触手が秘所を撫で上げると、つぅ、と愛液が透明の糸となり、僅かに引いて消えた。
入り口を幾度か行き来して擦り上げれば、くちゅくちゅと濡れた音が僅かに響いた。
耳まで真っ赤に火照りあがるような羞恥に涙を滲ませながら、マーモンはふと笑い、口を開いた。
「随分と、惨めな男だね、六道骸…」
「…何ですか?」
「聞いたよ…君、リボーンに負けたんでしょ…うぅん、正確にはリボーンの生徒に、かな」
ぴくり、と骸の眉が不機嫌そうに動いたのを見て、マーモンは言葉を続けた。
「情けないね…アルコバレーノに負けたから、って、僕でその恨みを晴らそうって魂胆?…八つ当たりだね」
最後の一言は、僅かに叫ぶような非難の言葉だった。
屈辱を掘り当てられ、骸が俯いて肩を震わせ、笑い声を上げる。
「クフフ…フフ…ッハハハハ……!」
徐々に高くなる笑い声。顔を上げた骸は、ニィ、と歪んだ笑みを浮べた。
その笑みだけで、ぞくり、とその場に立つ幾人もが、背筋を震わせる。危険な、笑み。
「…気が変わりました。適当に切り上げようと思っていましたが、今終わらせるのは癪です」
す、と骸が笑う間額に当てていた手を離すと、いつから乗っていたのだろう、その掌では赤い瞳を持つ黒い蛙が、ムハー、と息も荒く鎮座していた。
「っ、ファンタズマ…!?」
見慣れたその姿に、マーモンが驚いた声を上げた。
アルコバレーノに与えられる様々な能力を持つ動物。
そのひとつであり『巻きガエル』の姿を持つファンタズマは、マーモンの生来の相棒に他ならなかった。
黒い蛙のその姿が幾度か瞬くと、パリン、と音を立てて、クロームと戦っていたときと同じ
自らの尾を咥えた蛇のような、巻きガエルへとその姿を変えた。
「アルコバレーノ(呪われた子)ならそれに相応しい呪われた初夜を、遂げていただきましょう」
骸がパチン、と指を鳴らすと、宙に浮いた巻きガエルがふわふわと浮きながら、主人の元へ昇っていった。
「ファンタズマ、だめ、っ、ぁあッ!!?」
ふるふると弱く首を振るマーモンの制止も虚しく、ファンタズマは咥えていた自らの尾を離すと、その細い舌をマーモンの未だ柔らかい肉芽に伸ばし、ちろ、と舐め上げた。
途端に、今まで以上の少女の嬌声が、体育館に響き始める。
「う、だめ、やめてッ…」
チロチロと舌先で肉芽を舐めながら、鱗に覆われた尾は、秘所の入り口をなぞり始める。
くちゅ、と濡れた音と同時に、マーモンは身体を震わせた。
「や、あっ、そこはっ」
ちゅぷ、と細く尖った尾が秘所の入り口へ宛がわれ、浅く擦り上げる。
ひっ、と悲鳴じみた呻きが毀れたが、ファンタズマの動きが止まることはなかった。
「いや、やめて、ファンタズマ、だめぇえッ!!」
愛液に濡れた秘所を、その細い尾は徐々に昇っていく。
潤滑油で難なく開いた入り口から先に差し掛かり、ぐ、と尾の動きが止まった。
例えファンタズマの細い尾と言えど、今のマーモンは年端も行かない幼女の姿。
貫いてしまえば、そこにあるのは骸の言葉どおり、”呪われた初夜”である。
恥辱と屈辱に表情を歪め、マーモンは自らの舌を噛み切ろうと、唇を開いた。
だが、自ら死と純潔を選ぶことすら、少女には今許されなかった。
「クフフ…させませんよ」
くい、と骸が指を上げると、途端に今までの何倍もの快楽が、マーモンの身体に圧し掛かった。
「ひぎッ…あ、ぃやああッ!!」
神経を直に侵されるような快楽が駆け巡る中、びくんと跳ねた体の動きにつられたかのように、解されてもいない、処女の中を、蛇の尾がずぐり、と押し入った。
痛みを超越する快感を有無を言わさず与えられ、マーモンは身体をびくりと弓なりにしならせ、抗えぬ、耐え切れぬ刺激の波に、悲鳴を上げながら絶頂を味わされていた。
触手の蠢きひとつでさえ、先程の何倍もの快楽となり襲い掛かる。
意識では抵抗しなくては、と解っていても、理性を保つ事ができない。
僅かな逆らいと言わんばかりに頭を左右に振れば、ばさり、とフードが取れて顔が露になった。
「おや…どんなメデューサかと思いましたが、可愛らしいではないですか」
顔は手を加えてないんですよ、と言う骸の顔には、歪んだ笑みが浮かんでいた。
黒い肩ほどまでの髪に白い肌、そして黒く縦長い瞳孔の紅い瞳。
蛇目、と言われる瞳を見開いて涙を零すマーモンの姿は、骸の受けた屈辱を打ち消すに足りたらしい。
「は、ぁ、う…ひぃ…あ…」
息をするのもおぼつかない様子で身体を跳ねさせ続けるマーモンに、骸は今一度指を鳴らした。
すっと触手の動きが止まり、宙吊りになっていた体が床に緩やかに落ちていった。
「あ……う……」
焦点の定まらない瞳を開きながら、マーモンは冷たい床に横たわっていた。
目の前ではファンタズマが黒い蛙の姿に戻り、心配そうに自分を覗き込んでいた。
お前も、操られていただけなんだね、と言おうとした言葉は声にならず、
マーモンはただ痺れの残る体に鞭打って、伸ばした指で微かにファンタズマの頭を撫で大丈夫、という言葉の代わりに微笑みかけるので精一杯だった。
無理矢理快楽を押し付けられた体は、今は重く、鉛のように自由がきかない。
つぅ、と足の間から零れ落ちる生暖かい血の感触に反応することすら、出来なかった。
カツコツと足音が近づく。顔を動かす事も出来ず、視線だけでその方向を見れば、満足そうな笑みを浮べた六道骸がそこに立っていた。
「良いモノを見せていただけましたので、今宵はここまでにしましょう…」
骸が指を伸ばし、藍色のおしゃぶりに触れる。
何をする、という声も抵抗も形にはならず、藍色のおしゃぶりは鈍く一度光ると、その球体の中に骸骨のマークを刻み、骸の指から離れた。
終わったはずの幻覚の中で自分の身体が戻らないことに、幼女になるという幻覚をおしゃぶりを媒介に引き続きかけられたと気付いたところで、マーモンには何も出来なかった。
ぼやける視界の中、骸が自分から霧の指輪の半分を奪うのが微かに見えたが、マーモンの意識はそこで途切れ、勝負の決着を聞くことなく抗えぬ眠りへと誘われていった。
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