月光(FE 蒼炎の奇跡 )

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某月某日

オルリベス大橋での激戦を終え、かの四駿のプラハを討ち取り我々クリミア軍はようやく対岸の砦を占拠するに至った。

戦場には、全滅したと伝えられていた旧クリミア軍の精鋭も駆けつけ共に奮戦。王女エリンシアの名の下に次々と兵力が集結しつつある。
デイン=クリミア間の国境を超え、いよいよ狂王アシュナードと対決すべく王都へ進軍しようという気運高まる我がクリミア軍にとっては幸先のよい戦いになったと言えるだろう。
僕はというと今回の戦いの終結後、自ら申し出て敗残兵の散策部隊へ配置され現在オルリベスの砦周辺にて残敵討伐の任務に当たっている。
何時もならば、戦いの後は必ず将軍であるアイクやエリンシア王女、そして各諸侯を交えた作戦会議に参列するのだが・・・。

大橋での戦いで、プラハ将軍は卑劣な罠を多用しておきながら自ずと四駿の名を辱しめるような無様な大敗を喫した。
将軍の性質から言って、砦や周辺に未だ何かの罠が仕掛けられていないとも限らない。
僕はそういった類の姑息な策略を見破る為の眼力には長けていたし、今回はある胸騒ぎが拭いきれなかった。
だからこそ重要な作戦会議を欠席し、僕はこの任務を買って出たのだ。
すべてはアイク率いるクリミア軍の輝かしい勝利のために。
呼び止める兵士に手振りで「大丈夫だ」と合図し、僕は部隊の隊列を離れ砦の南西にある小さな林に足を踏み入れた。
こういう場所が一番危ない。敗残兵やデインの新たな伏兵が潜んでいるとすればこの辺りに違いない。大勢の兵士で1度に進入してはそれだけ敵の奇襲を受ける的が増えるだけだ。
僕は慎重に茂みに身を潜めながら周囲の様子を伺った。

ふと・・・小さな呻き声と、林の奥に潜む僅かな気配を僕は捕らえた。

(敵兵か?!)

僕の心臓の鼓動が一際高まる。身構えようと右足を後退さった拍子に、僕は迂闊にも地面の枯れ草の合間に埋もれていた小枝を踏み折ってしまった。

ぱきっと甲高い音が周囲に響き渡る。潜伏していた気配がびくりと反応するのを感じ、続いて聞き覚えのある声色が耳をついた。

「誰だ・・・?!デイン兵かいっ?」

どうやら僕の悪い予感は的中してしまったようだ。声の主は高圧的な女・・・
そう、あの四駿が1人・プラハ将軍のものだった。

将軍を討ち取ったのはアイクだった。彼の剣技の上達は目覚しく、たとえ四駿の将軍を前にしてもその腕に全く遜色は無い。

しかし、僕にはアイクに女が殺せるとはどうしても思えなかった。

彼は父であるグレイル団長の気質を忠実なまでに受け継ぎ、戦場においては命取りとなるような甘さも同時に内包していたからだ。
恐らく殺したと見せかけて、密かに彼女を逃がしておいたのだろう。
けれどその胸騒ぎも今、杞憂に終わる。
僕は隠し持っていた聖水を身体に振り掛け、将軍から充分に間合いを取ると雷撃の魔導書を片手に抱え、魔法の詠唱を開始した。

林の奥から四駿のプラハが姿を現す。・・・がもう遅い。
彼女の所持するフレイムランスは例え間合いが遠くとも、炎の魔法を穂先から繰り出し敵を撃つことができる、エンチャント(武器魔法)が掛けられた古代の宝具である。
しかし、魔力が極限まで高められた賢者である僕の前では児戯に等しい。
しかも僕が現在詠唱している雷撃の魔法は、彼女の炎を打ち消す属性効果が最大限に発揮されるのだ。
詠唱を終え、彼女を攻撃しようと掌相を構えたところで将軍は僕の顔を見て喜色を浮かべた。

「お前は・・・クリミア軍の参謀の・・・・。

お前のその額の印は・・・「精霊の護符」なんかじゃないね?
フン!他の奴らの目は誤魔化せてもあたしには通用しないね。
なんたって「お仲間」なんだから。」
・・・・この女。

奴は僕の秘密を知っている。他の誰にも知られたくない、いや知られてはならない秘密を。プラハの胸元が大きく開かれた鎧の陰に「あの印」の姿が僅かに覗く。なるほど、そういう事か。
手心を加えるつもりなど最初から毛頭なかったが・・・。

最早数秒たりとて長く生かしておけぬ。
「・・・・・・・・・仲間? 冗談はやめてください・・・
僕は・・・生まれてから1度も、そんなものを持った覚えはありません。」
途絶えていた僕の雷撃の魔法が完成する。しかし手加減などしない。
僕はプラハがフレイムランスを構える一瞬の隙をついてもう一度雷撃の魔法を高速詠唱し、一撃目に乗せて奴に叩き付けた。

ラグナロクオンラインで言うところの、僕のDEXは120以上。
奴が繰り出す炎の魔法など、僕には動きが止まって見える。
稲妻がプラハの頭上で炸裂し、辺り一面が閃光に包まれる。
彼女の断末魔とも言える激しい絶叫が聞こえてきたのはその直後だった。

雷撃によって周囲にたちこめた粉塵の中から、全身を雷によって黒く焼かれたプラハが姿を現す。彼女は身体を引きずり、口から薄く煙を吐きながら僕を睨み付ける。あれだけの雷撃を喰らってまだ息があるとは・・・
腐っても流石は四駿と言うべきか。
「お・・・・のれぇ・・・。貴様・・・・。この・・恨みは必ず晴らす・・。
あた・・しの最後の力を使って・・・・お前に呪いを掛けてやるよ・・・。
せいぜい・・・・苦しむが・・・。」

消え入りそうな声でプラハが僕に呪詛の言葉を吐きかける。
太古より、この手の捨て台詞を残して死んでいく敵は最終ボスの足元にも及ばない三下と相場は決まっている。
スーパーマリオで言うところのハンマーブロスでありゼルダの伝説で言うところのアクオメンタスでありファミコン探偵倶楽部で言うところの綾城アキラである。

僕は奴が事切れるのを確認すると、ローブの埃を手で払いのけ踵を返してその場を後にした。邪魔者を排除し、心中の暗雲は晴れまことに清清しい気分で僕は砦へと帰還を果たした・・・・はずだった。

だが、この後・・・。
プラハが残した言葉の真の恐怖を僕は目の当りにすることとなる。

 

僕は夢を見た。

目の前には男と女がいる。
男の顔は知らない。鋼のような巨躯にいかめしい鎧を纏い冷徹な瞳には静かな炎を湛えている。
女は先刻、僕が殺したプラハ将軍だった。彼女は一糸纏わぬ淫らな姿で男の足元へ縋りながら何事かを叫んでいる。僕の最も嫌いとする類の女の艶かしい喘ぎ声。

僕が幼い頃、便宜上僕を育てていた女は身体を男に売っては、僅かな金銭を受け取り生活していた。
客の男が僕が暮らしていた家へ来ると、僕は外に追い出され朽ちかけた木の壁に寄りかかるようにしてしゃがみ込みただ時が過ぎるのを待った。
僕が待つのは決まって夜だった。女は子供を孕むのを恐れて客を取るのは必ず月の物が続く晩だけ。
空にはいつも真円の月の光が輝き、僕はただ空虚にそれを見つめながら座っていた。

女があげる喘ぎ声と、今僕の目の前でよがるプラハの声が不快な和音を醸し出し耳に粘りつく。
男が帰ると僕は家の中へ引き入れられ、酷く殴られた後に心無い罵詈雑言を浴びせられた。
いつしか、僕にはそれが耐え難い恐怖となり毎夜月の光を見つめては女神に祈りを捧げていた。

僕をここから助け出してください。ここではないどこかへ。
僕は唐突に目を覚ました。
オルリベス大橋からクリミアの王都に向けて進軍すること2日。
現在、王女の下へ馳せ参じたクリミアの遺臣・ルキノの情報によりデルプレー城方面への進路を進んでいる。城まではまだ数十里の距離を数え、兵馬を休ませるために我々はこの平原に陣を張ったのだ。

陣内には複数の天幕が張られており、僕は自分に宛がわれた小さな天幕の中で眠ってしまっていたらしい。
久しぶりに眠れたかと思えばあの悪夢。
あれがプラハの呪いだとすれば、何という低俗で下賤な代物だろう。
ある意味あの女らしいが、僕はその寝覚めの悪さに短く舌打ちした。
気分を入れ替える意味も兼ねて、僕は小用を足そうと表へ出た。
山の峯峯から吹き込む夜の寒気が肌を針のように刺す。
天幕の裏手の木陰へ回り、ローブの裾をたくし上げたところで僕は眉をひそめた。

下に履き込んでいた下着が妙に緩いのである。
食事は普通に採っていたつもりだったが、連日の戦闘で少し痩せたのだろうか。
手を掛けると、下着は抵抗も音も無くすとんと地面にずり落ちる。

・・・そこで僕は自分に起こった異変にようやく気付いた。

何というか、つまり男性の象徴たる「陰茎」と「睾丸」女性読者諸氏には失礼だが、砕いて言うなら「ちんこ」と「きんたま」が僕の身体から忽然と姿を消していた。

僕は酷く狼狽し、再び手で下肢の辺りを確認してみるが、やはりない。
閃光のようにある直感が僕の脳裏をかすめ、僕はその手をそのまま自分の胸の方へと這わせた。

手に触れるのは2つの柔らかな膨らみ。

・・・・・何という事か。
あの女・・・・これが奴の宣告してきた「呪い」だとすれば想像以上に卑劣な効果を発揮し、多大に僕を打ちのめしたと言えよう。

驚愕で身体を震わせる僕の背後から唐突に声が響いた。
「んなんだぁ? お前パンツ下ろしたまま何やってんだよ。小便かセネリオ?
まさかこんな人目につく所で慰めてたわけじゃないだろうな?」
下品な笑いを浮かべて僕に声を掛けたのは、グレイル傭兵団の古株(と言っても1度裏切ったが)である素行最悪品性下劣男のシノンだった。

僕は以前からこの男が気に入らなかった。
物事を感情論ではなく現実的に捉える点では作戦上意見が合うこともあったが、僕にとって唯一無二な存在であるアイクを「アイク坊や」などといやらしい呼称で揶揄し、何かに付けて反発し足を引っ張る愚行は到底許せるものではない。
近頃では弟子であったヨファに弓の腕の差を詰められ影を薄めつつある。弟子が見事師の実力を超えるのならばもう思い残すことはなかろう。

そのうち僕の手で息の根を止めてやる。覚悟しておけ。
「あなたこそ覗きとはいい趣味ですね。その低俗な頭を無駄に働かせる前に少しでも弓の腕を磨いたら如何ですか?」

「・・・・あれ? お前、セネリオだよな。」
しまった・・・・。僕の喉から出る声色はこの上なく高く細い。喉に触れると近年ようやく少しずつ顔を出し始めた喉仏まで姿を消している。
僕は慌てて下着を上げ、ローブを掻きこむようにして押さえると後ろから引きとめようとするシノンの声を無視してその場を走り去った。
だめだ・・・。完全に性別が逆転している。
天幕へ這う這うの体で駆け込み、震える手つきでローブを脱ぎ捨て僕は自らの全身をくまなく調べた。

忌むべき己の出生によって、僕の身体は他人のそれより数倍成長が遅い。
然るに骨や四肢も未成熟であり元々細身ではあったのだが、肩や腕、腰の線はより一層丸みを帯びて細くなってしまっている。

鎖骨の下には白い双丘。これは何とかしないとローブの上からでも存在が解る程に膨らんでしまっている。先程天幕へ駆け戻った時感じた事だが恐ろしく邪魔な代物だ。走る振動で発達した乳腺が刺激されまことに痛い。

・・・そして肝心の股下。淡い茂みを指で掻き分け探ると小さな陰核に触れる。
以前の僕の自身も決して人前で自慢できるような物ではなかったが、それが更にこんな姿へと成り果てた様には流石に泣けてくる。
2つの睾丸が収まっていた陰嚢も姿を変え、薄紅色の花弁となって僕の秘所にひっそりと咲いていた。
その花の中央。陰嚢の下にあった薄い縫い目は見事に縦に裂けまだ未発達な女性器を形成している。

嘘だ・・・これはそう、幻だ。

指先をそっと膣口に挿入すると、引き攣るような痛烈な痛みを感じそれが嘘でも幻でもない非情な現実であることを僕に知らしめる。
同時に全身から粟のように汗が滲み出す。
僕は暫らくその状況を受け入れることができず、阿呆のように中空を両の眼で見つめながら放心していた。
「セネリオ! いるか?」

突然、天幕に押し殺した声が響き渡る。
僕は口から心臓が飛び出る勢いで驚倒し、慌てて下着やローブを身にまとう。
が、指先が震えて上手くいかない。

「そ・・・その声はアイクですか? 少し待ってください。
ちょっと今立て込んでまして・・・。」

「早くしてくれ」と急かすアイクに気を動転させられながらも僕はやっとの思いで衣服を元の通りに着込んだ。
そして天幕を捲ってアイクを中へ引き入れる。

「お待たせしました・・・。アイク、どうしたんですかこんな時間に。」

「・・・・セネリオ、何かいつもと違わないか?お前。」

僕は片腕で胸を押さえ、片腕の袖で口元を隠しわざとらしく咳き込みながら「気のせいですよ」と苦し紛れの嘘をついた。

「少し風邪をひいてしまったようです。喉を痛めたので声が・・・。」

通常、風邪を拗らせ咽頭が炎症を起こした場合、声はしわがれ低くなるのだが「なるほど、大変だな」と直情で納得してしまうのがアイクの成せる業だ。
そのような強引なやり取りをしていると、天幕の外から甲高い女の声が聞こえてくる。

「団長さ~ん!!アイクさ~~ん? 何処にいったの~!?」
「・・・・・。」

「・・・・またですか。」

「いや、参った。あの女異様な臭いのする鍋を抱えて俺を追いかけてくるんだ。捕まると長いし、また匿ってくれ。」

彼女の名はララベル。
このクリミア軍に同行中の補給部隊に所属している道具売りの女性だ。
アイクは彼女の意中の男性像らしく、こうして暇さえあれば彼を追い掛け回している。
僕はオルリベスの陣中で彼女に「アイクの気を引くなら肉料理が最適」と助言を呈したのだが本当に作って食べさせるために持ってきたようだ。
しかし「料理は苦手だ」と彼女が話していた通り、アイクの気を引くどころか逆効果になってしまっている。

将軍という多忙な身で、無駄に時間を過ごす暇などアイクには無い。
また自分が出向いて彼女を撒いてこようかと考えた時、僕の胸には例えようもないむかむかとした胸痛が込み上げてきた。僕は即座に直感する。

そう・・・これは嫉妬だ。僕は彼女に嫉妬の炎を燃やしている。

「彼女もしつこい人ですね。明日もまた出発が早い事ですしそろそろ休まないと支障をきたしますよ。今日はここで眠ったらどうですか?」

僕の意思とは全く関係なく、その言葉が口をついて出た。
心中には嵐が吹き荒れ、僕は自分の思考を探るので精一杯だった。

「お前が色々考え事をする時は1人のほうがいいんだろうと思ってここを用意したんだけどな。構わないなら今日はそうするか。悪いなセネリオ。」
僕の心臓の鼓動が高鳴るのが解る。まさかとは思っていたが、どうやら頭の作りまで女のそれに転じてしまったようだ。
男だった時分、それまで女の嫉妬程醜いものはないと僕は考えていたがいざその立場に立たされてみると苦しさに息が咽る想いに駆られる。

嫉妬とは悲しみと苦しみに苛まれる魂の慟哭のようだ・・・。
その苦痛から逃れたいがために、人は道を誤り時に堕罪する。
僕は寝台から少し離れた床の上に飼葉として馬に与えている藁を敷き詰めその上に毛布を掛けて寝床を作りながら、そんな事をぼうっと考えていた。

「俺が押しかけたんだから下で寝る。お前は寝台を使え。」

簡素な床に入ろうとしていた僕の腕を掴み、アイクは己の身を割りいれて毛布の上に寝転がった。僕は礼を言いながら触れられた腕をさする。
彼の力はこんなに強かっただろうか・・・僕の頬がじわりと熱くなった。
僕は己がアイクという個人に対して全ての存在意義を預けていることを知っている。
それがどんなに虚しく愚かなことであるかも。
けれど僕は共依存という道なくしては自我が保てない。
暗黒の中で独り朽ち果てようとしていた僕に手を差し伸べてくれたのはアイクだけだったから。
だから僕は彼の力となるべく知識を磨き、魔導を高めここまで戦ってきた。
男の内には何者も侵すことのできない孤高の世界が広がっている。
アイクはグレイル団長の意思と力を継ぎ、彼の遺した傭兵団を導きそして来たるべきデイン王との対決を待ちながら奮戦している・・・それが彼の孤高の世界そのものだ。
僕の居場所はそこにあり、自分にとっては唯一絶対の聖域であるはずだった。

でも・・・もしもアイクに愛する人が出きたなら。
男の僕には、そこだけは絶対に立ち入ることはできない。
アイクが僕の知らない顔で、知らない声で、伴侶となるべく女性に愛を囁く。
それを思うと胸が張り裂けるような悲しみに僕の心は蝕まれる。

以前はこんなこと全く考えもしなかったのに。身も心も女性に変じて僕の情緒は揺れ動く波のように不安定だった。
「セネリオ・・・。この間の話を聞いてから、俺なりにない知恵を絞って考えた。けど、わからん。おまえが自分の存在について、何か不安をもっているんだろうってそれ以外は何もな。だから、やっぱり話を聞くしかない。」

部屋を照らす蝋燭の明かりを見つめながら、アイクは僕に問いかける。
僕は己が何者かを悩んでいたこと、親の記憶がないこと、そして僕を育てていた
あの女のこと、魔導の知識を授けるべく僕を引き取った賢者のことをアイクに話してはいた。
けれどあの秘密だけは話せずにいる。それを彼は僕から聞きだそうとしているのだ。
「・・・どうして、放っておいてくれないんですか?
僕にはあなたしか頼る相手がいないのに。
あなたに嫌われたら・・・もはや生きてはいけないのに。」

「だからだ。おまえは俺以外の誰にも心を開こうとしない。
だったら、俺がなんとかしてやらんとおまえはいつまでも苦しみを抱えたままだろうが。」

「・・・アイク・・・僕は、僕は・・・。」

「俺を信じろ。おまえがたとえ何者でも、俺がおまえを認めてやる。」

「・・・・ぅ・・・はい。僕は・・・実は僕は女なんです!」

「な、なんだって?!! 」

なんだろう。どうして突然そう口走ったのかは僕にも解らない。アイクは驚愕し、半身を起こしてこちらを見ている。
・・・というか、僕とアイクとの支援会話Bから何の脈絡もない。
こんな苦し紛れの発言が信用される訳はないのに・・・と僕は思わず額を押さえた。
「そ・・・・そうだったのか。お前は女だったのかセネリオ。いや、確かに一見男か女か解らない顔つきだけどな。
それならそうと早く言ってくれればよかったんだ。そんな小さなことで悩むなよ、な?」
・・・・あなた大馬鹿ですか。

ボーレやヨファと一緒に共同浴場へ行った時の事は忘却の彼方ですか、そうですか。
では仮に、あの可憐なエリンシア王女の股ぐらに男性器の存在を確認した場合
「エリンシア、実はお前は王子だったのか!」とでもおっしゃるつもりですか。
ここはジョーク・アベニューじゃありませんよ?
嗚呼、時に僕の胸に去来するほのかな不安は、このアイクに己のレーゾンデートルを見出している自己への不安に他ならなかったのですね。頭が痛いです。

しかし、僕の心にはその事がきっかけである決意が芽生えた。

僕は寝台からおもむろに立ち上がり、燭台に立てられた数本の蝋燭の明かりを1つ残して全て吹き消した。部屋の天井には暗闇が垂れ、僅かな明かりを頼りに僕はアイクの枕元に立つ。

「セネリオ・・・?」

「アイク・・・僕は・・・僕は以前からあなたの事が好きだったんです。もちろん女として。」

「ええっ?!!!」

もちろん、事実無根の大嘘だ。僕がプラハの呪いによって女に変じられたのはつい先程の事。・・・けれど毒を喰らわば皿まで。

参謀としてアイクの力になりながら、女として彼と添い遂げてみせる。

もうお脳が腐敗した耽美派の女性諸氏に「ホモリオ」などとは呼ばせない。
男で在った時の経験を生かし、この僕の手練手管で超無神経男のアイクを見事たらし込んでやる。
僕を同性愛者として偏見の目で見つめ、陥れてきたプレイヤー衆は今後「セネリ子」もしくは「オネエリオ」とでも僕を称え、畏れ敬うがいい。
それから、ペンネーム:ゆひ(17歳女)さん。僕は今しがたから女になりましたのでその辺りを間違えないでください。ディレクターにも話を通しておきますので。
一般のノン気読者の皆様は、「セネリオは女」と10回程連呼してからここから先をお読みください。
僕はローブの襟元の留め金を外し、鎖骨の下・・・肩口あたりまで肌を露わにさせ、紐で止めるようにして腰に巻きつけてあるローブの下穿をほどいて下着ごと降ろす。
こういう時は、部屋中明るくするより断然間接照明にて仄かな薄暗さを演出させる方が効果的だ。僅かな蝋燭の明かりに照らされて、僕の大腿まで露出した白魚のような下肢がエロティックにラインを浮かび上がらせる。
アイクが異変に気付いたのか、座ったままこちらを向いて僕を仰ぎ見た。
僕が倒れ込むようにしてアイクの首周りに腕を廻したのはそれとほぼ同時だった。
胸が詰まるような甘い香りが周囲にふわりと立ち込める。

物思いに耽る時や、作戦の草案を練るとき、僕は気分転換に様々な香油をキャリアオイルで薄めてこめかみに塗ったりする。
女の色香を醸し出すために寝台の宮に放置されていたローズオットーの香油を首筋や手首のように体温の高い場所に密かに塗り込めておいたのだ。
細く吐息を掛けるようにして、僕はアイクの首元に唇を這わせる。
「・・・っ、ちょっと待て!セネリオ!!」

アイクは酷く狼狽しながら、僕の両肩を掴んで自分から引き離した。
けれどその弾みに、ローブの襟元が更にずり落ちて左胸が外気に晒される。
彼はびくりと反応すると、慌てて僕の肩から両手を離して頬に朱を昇らせた。

「すまん・・・。」
・・・そうですね。僕の知る限りではあなたは 童貞 ですものね、アイク。
でもここまでお膳立てしておいて何もしないとあっては将軍の名が廃ります。
女に恥を掻かせるつもりですか?据え膳喰わぬは男の恥ですよ、アイク。
「驚かせてしまいましたか?
でも僕は以前からずっとあなたとこうなることを望んでいた。

先程あなたは言ったじゃないですか。僕が例え何者でも僕を認めてくれると。」
「いや、確かに言ったが・・・それはだな、そういう意味じゃ・・」

僕はそこから先は彼に言わせなかった。
再び首に腕を廻し、半ば強制的に彼の唇を塞いだのだから。
口唇を斜めに交差させ、舌先で彼の内を探る。もどかしく舌が縺れ合いその甘美な刺激に僕の身体には快楽がまるで電流のように走った。
そっと瞳を開けると、僕を見つめるアイクと視線が重なる。
僕はもう1度眼を閉じると、自分の髪を留めている結い紐を解き続いてアイクの額に巻かれている布をほどき落とした。
抱きつく腕に力を入れて体重を掛けると、僕との熱い抱擁で骨抜きになったのか
いつもの彼からは想像できないほど抵抗なく容易に後ろへ倒れ込む。

彼と濃厚に舌を絡ませながら、僕はアイクの襟元を胸まで広げて自らの胸を押し付け、脇腹の方へ手を滑らせる。彼の上半身がびくりと反応した。
右の太腿を下肢の間へ差し入れると、彼の昂りを熱く感じる。
そのまま膝先を優しくさするように動かすと、僕のローブの裾がずれ動いて臀部の少し上まで肌が露出した。ある意味、男性の想像を掻き立て、裸よりも妖艶で官能的な姿だ。

「セネ・・・リオ」

お互い荒い息を吐きながら、愛撫でぬめり怪しく光る唇を離すとつうっと透明な糸が垂れる。僕の下腹部には痛い程熱く、硬く性への快楽が迸り、僕を翻弄する。
この先僕はどうなってしまうんだろう・・・朦朧とした頭でそんなことを考えていた。
上体を起こし、彼に馬乗りになったまま僕は器用に立てた膝を動かし彼の下腹部の方へと移動する。震える指先で、なめし革で作られた帯の留め金をほどきアイクの下衣と下着とをゆっくり下ろすと、既に昂り硬くなった性器の先から透明な粘液が衣服との間で糸を引いた。
僕はそのまま赤子のように四つん這いになり、彼の自身を口に含む。
この体勢では、肩口まで開かれたローブは下方へ垂れ下がり
アイクの位置からはだけた両胸が見える状態になる。腹部から下は完全に露出してしまい最早衣服はその役割を全く果たしていない。

私的な思惑だが、この「四つん這い」と「口腔による愛撫」とはエロスの極致だと僕は思う。
「ちょっ・・・やめ・・・・・っう・・・。」

アイクの息遣いは激しさを増し、口をつく言葉はもう形にならない。
僕も一応男であったのだし、どうしたら感じるかは良く解っている。

僕は右手の指でそっと幹を持ち、舌先を蛇行させながら焦らすように下から上へと線を描く。
そして限界まで張り詰めた頂をそっと唇で包み込んで、先端を舐め廻しながら何度も尿道へ舌を差し入れた。

彼の自身はますます熱を帯び、痛々しい程筋が浮かび上がっている。
それとは対照的に少しひやりとした陰嚢を口に含むと、淡く茂った秘毛が唾液に濡れ舌先に絡み付いてくる。そのまま皮の上から睾丸を吸い上げながら、僕は彼の菊座を指先で優しくさすった。
「っ・・・・・あっ」

アイクの身体は小刻みに震え声は乱れ、そろそろ絶頂が近いことを告げる。
僕は彼の自身を舌の根辺りまで口腔で包み込み、強く吸い込みながら舌を絡ませる。
そして右手で硬く強張った幹を掴んで激しく上下させた。
口内が押し返されるように、それが熱く猛る。
アイクががばりと半身を跳ね起こして、僕の肩を掴んで自身から引き離したのはその直後だった。
口で受け損ねた分の精液が、僕の頬と鎖骨を伝って垂れ落ちる。

アイクは息を大きく荒げながら暫らくそれを見つめると、「ごめんな」と僕に謝罪して枕代わりに使っていた魔導書に巻かれていた綿布を剥ぎ取り、僕の頬を拭った。
「謝ることなどないのに・・・・。でも嬉しいです。感じてくれてたんですね。」

僕は彼の胸元に顔を埋めると、そのまま彼の右手を取りローブの下の秘所へと導く。
アイクの心臓の鼓動が激しく脈打つ音が僕の耳に響いた。

「・・・次はここに・・・。抱いてください、アイク。」

ほんの刹那、彼は戸惑いを見せていたが、先程とは逆に僕の腰に手を廻すとゆっくりと僕を自身の身体の下へ組み敷いた。
彼の唇が僕の首筋を這い上がり、吐息と舌とが甘く耳穴をねぶる。

ぞわりとした快感とこそばゆさに耐えられず、僕はその呪縛から逃れようと首をそむけたがアイクの逞しい腕に頭を押さえつけられ、ますます焼け付くように耳を愛撫される。
「ふっ・・あっ・・・・ああっ!」
身体の芯が弾けそうだ。僕の瞳からは涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちた。
熱く火照った秘裂は彼の無骨な指に貫かれ内を激しく掻き乱される。
・・・このまま裂けるほど抱かれたい・・・そうおぼろに思いを馳せ白む意識の中彼に身を委ねる僕の脳裏に、突然声が響いた。
あの・・声を・・・・僕は知っている。
醜く淫らに快楽を貪る、あの女の声。そして夢で見たプラハの喘ぎにもそれは似ていた。

突然僕は我に返り、力いっぱい両手を突き出しアイクの身体を押し出した。

「セネリオ?」

アイクは驚きを隠せない表情で僕を見ている。口から激しく漏れる息で胸が苦しい。
じわりと熱くなった瞳から、止め処なく涙が溢れて止まらない。

「ごめ・・・んなさい。僕はやっぱり・・・・・。」

声が詰まってそこから先が言葉にならなかった。僕は・・・同じだ。
あれ程忌み嫌っていたあの女と僕と、どう違う。

「僕は・・穢れている。あなたに抱かれる資格なんかないんだ。」

腹部が小刻みに痙攣し、嗚咽のように声が漏れる。そう、僕は穢れている。
心と・・・・そしてこの身体も。
「僕は・・恐らく「印つき」なんです。」

「印つき・・・?」

「ベオクとラグズの・・・混血です。女神の定めし理を犯したためにどちらの種族からも忌み嫌われる不浄の存在・・・・。」
「・・・よくわからんが、とにかく、おまえはラグズの血をひいてるってことだな?」

「はい・・・・。」
ベグニオンに滞在中、僕はかねてから疑問を抱いていた自分自身の謎を解き明かすために古代の書物の宝庫でもある大神殿マナイルの書庫に通い詰め、この印の秘密を知った。

僕をあの女から引き取った賢者は、僕の額の印を魔法の儀式として行う「精霊の護符」と思い込み知識と魔導を僕に継がせるため、寝食を惜しんで日夜心血を注ぎ込んだ。
だからこそ僕もそれを信じて疑わなかったのだ。しかし非情な現実は僕を暗闇の底へと深く追い落とした。

これまでだ・・・彼を騙して陥れるような真似は僕には出来ない。

「すみませんでした・・・。もう帰ってください、アイク。
僕も今日の事は忘れます。」
「それで・・・おまえが、ラグズの血が混じった印なんとか・・・なのはわかった。それで、それがどうしたんだ?」

「え?」

アイクが僕を真っ直ぐ見据えながら問い掛ける。彼の瞳には嫌悪も困惑もなく
いつもの彼の硬い表情そのままに僕を見つめていた。
「それがどうしたって・・・不快じゃないんですか!?
自分の傍らに・・・こんな何にも属さない存在がいて・・・!」
「いや。特になにも変わらん。

セネリオはセネリオだろう。俺の団の有能な参謀だ。
おまえがいないと、団はたちまち立ち行かなくなる。」
僕はアイクの言葉を俄かには受け止めきれず、この期に及んで彼に反論の言葉を紡ぎだそうと口を開いた。

僕の唇はふいにアイクのそれで塞がれ、それ以上声が出なかった。
再び僕の身体は、彼の身体に押さえ込まれるようにして倒される。
「もう・・・いいから。 今は何も考えるな。」
アイクの両腕が固く僕の肢体を抱きかかえる。生乾いてひりひりと痛む僕の頬に、再び大粒の涙がこぼれ落ちた。僕の脳裏にはまた、声が響く――――。
あの女の声ではない。それはあの月の夜・・・幼かった僕の切なる願い。
「僕をここから助け出してください。ここではないどこかへ。」

女神は果たして僕の願いを叶えた。

僕の存在は暗闇そのもの。深い悲しみと絶望をそのままにいつも心には死の影がよぎる。
けれど・・・一心に祈りをささげたあの夜の月光は、今僕の目の前に在る。

遥か天空に輝く月の光のようにアイクは闇の中から僕という輪郭を鮮やかに照らし出す。
そして僕が求めた居場所もまたここに・・・。

どうして・・・どうしてそんな事も気付かなかったんだろう。
焼けるほどに熱い彼の自身に貫かれながら、僕は確かに今自分が生きているという激しい痛みを感じていた。彼の躍動が激しさを増し、僕の内で何かが弾けた。
「セネ・・リオ。いつまで・・・・お前はいつまでそうしてるつもりだ。

お前がそうやって闇の中に自ら身を浸していても・・・何も変わらない。
黒く・・・深くひずんでいくだけだ。

もう・・・・いいじゃないか。

お前こっちに来いよ。勝手に行くな。」
荒い息を吐き出すように、アイクは僕に語りかける。そう、僕にはもう何処にも行くあてなどない。アイクの側で力になろうといつも決めていたのに、それなのにいつの間にか暗闇に惑い、僕は道を失いかけていた。
「アイク・・・1つだけ聞いてもいいですか。」

「なんだ?」

「どうして、全てのデイン国民が救われるわけじゃないのに、あの時ダルレカの民に施しを?

どうして・・・・全ての人々を救えるわけではないのに、死に掛けていた子供を助けたんですか。」
「お前は頭はいいのにそんな簡単な事も解らないのか? セネリオ。仕方がないから1度だけ教るぞ。1度だけな。
・・・そんなの人間だからに決まってるだろう。」

「人間・・・。」

「お前にだってそういう心はあるさ。ただ、気付いてないか
わざと見ない振りをしているだけだ。」
そうか・・・そうだったのだ。
生と死を、愛と憎しみを、激しく相反する2つを内包しながら人は生きてきた。
理屈ではなく、魂の奥底から湧き上がる善や悪の感情の奔流。
人は奪い、騙し、殺し合いながら同時に愛し、与え、護りあう。

女神の理に反目するように、人は生まれながらに矛盾を抱えている。
けれどその矛盾こそが人を人たらしめる所以でもあるのだ。

僕にも・・・・いつか気付く時がくるのだろうか。
すぐ側に温かなアイクの体温を感じながら、僕はうっすらと眠りに落ちていった。
・・・・光を感じる。もう、朝がきたのだ。
僕はアイクを起こさないように、気配を殺してそっと寝床から抜け出した。

「・・・・あれ?」

僕の眼下には平たく薄い胸板。僕は一瞬で目を覚まし、慌てて下肢の間を手で探る。
・・・・どうやら・・・無事?に男に戻れたらしい。
振り返ればアイクがいびきをかいて気持ちよさそうに眠っている姿が目に入る。

僕は深い溜め息を吐くと、衣服を身に纏い、いつものように髪を革紐で括った。
そしてアイクの枕元まで移動すると、頭の下に敷かれている魔導書を勢い良く抜き取る。
ごつっと豪快に頭をぶつけ、驚いたアイクが上体を跳ね起こした。
「いっ・・・・・・つ・・・・!!  あれ? セネリオお前。」

「アイク、もう朝ですよ。今日も早いんですからさっさと起きてください。
将軍が寝過ごしたとあっては部下に示しがつかないでしょう。」

「・・・・あれ?! お前女・・・じゃないのか? 昨日俺とお前は・・・
その、抱き合ってて。」

「気色の悪いことを言わないでくださいよ。寝ぼけて夢でも見たんじゃないですか?」

僕は裸のまま、疑問に満ちた顔で頭を掻くアイクを置いて天幕を後にした。
空からは太陽の光が地上に降りそそぎ、僕の気分は何とも晴れやかだった。
彼が毛布に染み付いた僕の破瓜の血を見つけるのは、このほんの少し後のことになる。
僕がプラハの呪いによって彼の半身で居られたのはたったひと夜だったけれどそんな事はもうどうでもいい。
彼は僕という存在を認め、1度でも受け入れてくれた。
その事実だけで僕はこれからも生きていける。

ティアマト副長の天幕まで今後の進路と作戦を相談しに行く途中、深酒が祟ったのか弦の外れた弓を小脇に挟んで頭を抱えているシノンに出くわす。

「・・・シノン。今後は敵の竜騎士隊も主力の一部として数多く戦場で交戦することが予想されます。ただでさえ弓兵は数少なく貴重な戦力なんですから、そんなことでは困りますよ。しっかりしてください。」

「へ?」

僕はシノンに一瞥をくれるとそのまま歩き出した。
シノンが珍獣でも見るような目つきで僕を見ている。うるさい、何を言いたいのかは解る。
どうせ僕には柄でもないと思っているのだろう。

僕はお前が嫌いだが、今後少しでもアイクの役に立つために尽力するのなら仕方がないから生かしておいてやる。

さあ、彼になど構っている場合ではない。今日も僕にはこの軍を支えるためにやらなければならない仕事が山ほど溜まっているのだから。

遠くでミストが僕に「おはよう」と手を振るのが見える。
僕は短く返答しながら、朝日の中再び大きく溜め息を吐いた。

 

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