sense

Hey動画見放題プランが激安すぎる3つの理由(2万本が月額1000円)

Pi、Pi、Pi、Pi――

「う……ん…………」
枕元で鳴り響く耳障りな電子音は、否応なく微睡みにたゆたっていた意識を現世へと引き戻す。
すっぽり潜った布団から伸ばした爪先が、
カツン――
硬いモノに当たり乾いた音を小さく発てる。
爪を伝わって感じる微かな衝撃。そのまま掴み布団の中に引きずり込むと、手探りにスイッチを押さえた。
再び訪れた静寂中、布団越しに感じる朝日に気怠げに重い瞼を上げた。
「ふぁわぁ~」
小さめに上げるあくび。
寝ぼけ眼は目尻に浮かんだ涙で霞み視界は白い。まだ覚醒しきっていないのか、身体は鉛のように重く、感覚が酷く鈍い。
まるで、意識が身体の隅々に染み渡っていない――そんな感じだ。
視界のぼやけを取り除くように手の甲で瞼を擦りながら身を起こ――

!?

見開いた瞳に映る世界に、思考が一瞬停止した。
再度、よく目を擦ってみるが……
「見えない!?」
見えるのは、カーテン越しの薄日に白く照らされたぼやけた空間だった。
それはまるで、ピントの合っていないカメラの如く――輪郭の曖昧な世界。
鼻先に手をかざしてみると、目の前10センチ程の距離で始めてその像がハッキリと刻まれた。
「…………」
言葉も出ない。
目を覚ましたら、極端に視力が落ちていたのだ。何が起こったのか訳も分からない。
しばし呆然とする中――
ぐぅ~……
空腹感を誇示するように鳴り響いた腹の虫に、思考が動き出した。
固まっていても仕方がない。とにかく朝の支度をしようとベットから降り、立ち上がる。
ぼやけた部屋は、ハッキリ言って何があるのか判別できないほど霞んでいるが――それでもそれなりに暮らしてきた部屋だ。着替えるくらいなら問題ない。
そう思って、顔を洗おうと部屋の向こうにある洗面所へと向かう――その足が止まった。
ざっと辺りを見渡してみれば、全体的におかしさを感じる。
それは、目が見えないと言う単純な理由だけではない不自然さだ。
ぼやけた視界を断つように目を閉じ頭を捻ると――
鼻孔をくすぐる甘い匂い。小首を傾げた際、首筋に触れる髪の毛の触感に肌が粟立った。
後頭部に手を当て、掴み上げる髪の毛。短かったはずのソレの先端を探すように引っ張ってみれば、かなりの長さがあった。
髪を垂らして背中に手を回して確かめれば、髪の先端は腰まである。
「…………」
再び固まりかける。
視力の突然の低下だけではなく、不自然なまでの髪の伸び。
「事故ってわけじゃないよな……」
交通事故とかで長期入院していたというなら話もわかるが、曖昧ながらも辛うじて判別できる部屋は、無機質な病室のそれとは違った、普通の部屋だ。
ただ、そこに更なる不自然さが感じられた。
「何なんだよ……」
身に起こった摩訶不思議な出来事にふらつき、身体がよろける。その際――
「!?」
今までにも増して感じられた違和感に完全に固まる。
「嘘……だろ」
こぼれる声が震えていた。このまま気を失えればどれだけ楽か――
それでも確かめずにはおられない。今まで感じたことのない重力の流れを。
「ええい!」
意を決して胸に触れてみれば……指先に伝わってくるのは薄い布地越しに感じるぷにっとした弾力。広げ、触れなおした手のひらには柔らかさ――
そして、
包み込むように触れられたという、あり得ない感覚。
指先に伝わってくるのは、トクン、トクンとした逸る高鳴りと――熱さ。
思わず、慌てて手を離す。伝わるはずのない心音が、耳の奥では今も鳴り響く。
恐る恐るTシャツの襟元を引っ張って覗き込めば、ぼやけて何も見えないが、微かに分かる薄い肌色の二つの膨らみ。
半ば無意識に下の方へと手を伸ばせば、指先には何の出っ張りも感じられない。
「…………」
一瞬の呆け。
すとん――っと、力の抜けたひざが曲がり床にぺたり込む。うすぎぬ越しに、フローリングの冷たさが尻に伝わる。
「お、お、お、おんなになってる……」
震える声に始めて気付く。ソレすらも高くも澄んだモノになっていた事実に。
唖然と見渡す部屋は依然ぼやけたままだが、それでも見慣れた部屋とはかなり違っていたことを知った。
「悪い夢なのか?」
頬には指先の震えが伝わり、指先には肌理の細かい滑らかな頬の柔らかさが伝わる。頬に触れた指先で、強めに摘んでみれば、
「痛い」
目尻に涙が浮かんだ。痛みの走る頬を撫でながら、
「なんなんだよ……」
訳の分からない状況にガックリと項垂れる首。その際、長い髪の毛が腕を掠めていった。

 

 

ピンポーン――
ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポーン――

けたたましく鳴り響くインターホンの音に、手放しかけていた意識を取り戻す。項垂れていた首を上げ、音のする方へと目を向けるが、見えてくるのはぼやけた空間のみ。
ただ、
「ユキ! まだ寝てるの!? 学校、遅刻するわよ!!」
叫び声だけがハッキリと解った。
「……学校?」
キョトンとしていると、
「鍵開けるわよ!」
声と一緒にガチャリと扉の開く音が聞こえたかと思ったら、足音発てて近付いてくる気配があった。
「ちょっと、ユキ! あんた、まだ着替えてもいないの!? 終業式くらいちゃんとしなさいってば!」
「着替える? ユキ? 誰?」
気配をする方へと顔を上げる。
「あんた、また寝ぼけているわね。もぅ……」
こぼれ出た溜息が耳元を掠める。
「ユキはあんたで、あたしはあんたの幼なじみの舞。着替えるのは高校に向かうため。今日から期末試験なんだから、遅刻なんて出来ないでしょ! だいたい、引っ越すのが嫌だって無理矢理独り暮らししているんだから、成績落としたら、小父さん達に連れて行かれるわよ!」
耳元でがなり立てられ、鼓膜の奥がつんざく。
何か応えようと口を開きかけるよりも先に、
ぐぅ~
腹が鳴いた。
「食べ物」
思いだした空腹を訴えてみれば、
「朝食なんて取ってる時間なんて無いわよ、もう! だいたい、そっちはぬいぐるみであたしはこっち――って、あんたメガネはどうしたのよ!?」
「メガネ?」
小首を傾げる。目が見えない理由がやっと解った。
「無い」
「無いって、どこに無くしたのよ!? もういい、メガネはあたしが探してあげるから、ユキはさっさと制服に着替えなさい」
キョトンとしているといきなり、感じることだけは出来た視界の光が消えた。
「わぁっ、わぁっ、わぁっ!?」
慌てて頭に載せられたモノをどかして鼻先にかざす。それは紺色の大きな襟を持つ白いセーラー服だった。
「…………」
言葉を失うそこへさらに、白い細長いひも状の部分が付いた物体が投げつけられた。頭の上から顔に下がる紐を手にとってたぐり寄せてみれば、それは心地良い手触りのする――
「ぶらじゃ!?」
頓狂な声が口から飛び出した。
「あんた、時たま寝ぼけてノーブラで学校行こうとするんだから、ちゃんと付けなさいよ」
「はぁー」
ガックリと溜息漏らし、着替えようとTシャツの裾を手に取る。
「ひゃん」
勢いよくまくった裾が胸に擦れ、思わず声が上がる。
「う~……、何なんだよ」
何が何だか解らない。
クシュン――
不思議なくすぐったさを伴った肌寒さに、くしゃみが出た。
床に落ちているブラジャーを取ろうと下を向けば、胸に不自然な重力を感じる。思わず上半身を引き戻すが、そうもしてられない。
取り上げたブラジャーの紐の位置を手探りで探り当て、肩を通す。胸に触れたカップは冷たく、包まれたという感覚に心臓が再び高鳴る。
後ろに手を廻しホックを留めようとするが、初めてのことにどうにも上手くいかない。その内、長すぎる髪の毛が絡まったのか引っ張られ、走った頭の痛みに涙が浮かんだ。
「う~……」
「ちょっと、ユキ。タコ踊り?」
いきなり背後から髪の毛が引っ張られ、顎が上がる。
「あんたってば不器用なんだから……」
ほどけた髪が身体の前へと流され、ブラジャーのカップが強く押される。どうやら代わりにホックを締めてくれたようだ。
胸に感じる圧迫感に戸惑いながらも、頭を振って髪を戻す。先ほどまでと比べて揺れない胸には、初めて感じる安定感があった。
「さっさと着替えなさいよ。時間、ほとんど無いんだから」
押し付けられたスカートを広げ、仕方無しに足を通す。
「むぅ~……」
やり切れない戸惑いを押し殺し、転がっているセーラー服を取り上げ、手でその形を確かめながら着込み、横のファスナーを手探りで閉めた。
服を取った時に気付いたスカーフを結ぼうと胸の前に手を向ける。セーラー服の布越しに胸の上にあるブラジャーのラインを指先に感じ、一瞬手が止まった。
それでも何とか適当に結わえようとするが、やったことのない上に見えないから満足に結べない。
「ユキ、あんたメガネどこにもないけど、別に終業式だから問題ないわよね――って、貸しなさいよ」
代わりに結んでくれる少女の甘い匂いが鼻孔をくすぐった。その香りが、朝感じた部屋の匂いと同質のモノだと気付くのにしばらくの時間がかかる。
ついでとばかりに少女が髪の毛を梳き始めた。髪の毛に神経が通っているわけでもないのに、整えられていくそれは、何故か心地よかった。
全ての準備が終わったのを確認するとばかりに周りを回り出す少女の気配。辛うじて女性だというのが解るほどの視界の悪さの向こうから、相手の視線だけは鋭く感じ気恥ずかしい。
「だいたいこんなトコ――って、靴下忘れているわよ、ユキ」
ベットの端に片足ずつ上げ、焦げ茶色のハイソックスを履く。広がるスカートの裾。舞い込む空気の流れに、パンツ一つでいた時よりも逆に感じる心許なさ。
膝下まであるハイソックスに膝上丈の短いスカート。太股の半ばから膝までが何も無いという服は、かなり不思議であり、胸当てこそあるがそれでも大きく開かれた襟元は、空気にさらされた首元の肌の触感が鋭さを増し、異質な服を着ているという感覚を強める。
目が見えないだけに、なおさら――募る。これからの不安が……

ドッゴン!!

顔面に走る鈍痛。
「ちょ、ちょっとユキ、だい――」
背後から掛けてくる慌てた声に反応するように振り返ってみれば、大きく視界が揺れた。
「え? あれ? え…………」
ぼやけた世界はグルグルと回りだし、五感は遠くへと消え去った。

 

 

気が付けばそこはベットの中――
視界は依然ぼやけたまま。見上げる天井は儚く遠い。
「う……ん…………」
「あっ、気が付いたんだ」
部屋の奥から声が届いてきた。
顔を向けても、声の主の輪郭は限りなく存在しない。
「メガネが無いあんたを学校まで連れて行く自信も無くなったし、先生には二人とも休むって言っておいたわ」
ぼやけた世界の向こうから、溜息が聞こえた。
「しっかしドジね……そう言う風に設定したとは言え」
こぼした呟き。
普通なら聞き逃しそうな微かな囁きを耳にした途端、脳髄に痛みが走った。

!?

「人格投影システムを停止しろ!」
叫びに対して応えたのは、宙に浮く《ERROR》の警告。ぼやけて何一つ定かじゃない世界の中、それはクッキリと見えた。
「あっ、気が付いちゃったんだ」
耳に聞こえるは落胆の声。
でも、そんなモノにかまってる暇はない。
「コード22B5Wq97Tyッ!」
「無駄よ。先輩の管理者コードを書き換えさせて貰ったからね」
「先輩――って、お前、もしかして舞島由宇か!?」
「あら、あたしの正体まで解っちゃったんだ。もう少し、先輩に『女の子』の生活を楽しんで貰うつもりだったけど、仕方ないわね」
気配が近付いてきて、
「先輩が面白そうなモノをプログラムしてるって噂を聞いてね」
耳元で囁く。
「さすがは先輩よね。ここまで精密な人格投影システムを一人で作り上げるんだから」
甘い髪の匂いが鼻孔をくすぐる。
「だからって、これは何の真似だ!」
「あら、こんな面白そうなモノ、独り占めは良くないと思うの」
すぃっと横目を眇める。
「だ・か・ら――」
その横顔はそばにあるだけあってハッキリし、蠱惑的な笑みを浮かべた小悪魔そのものに見えた。
「すっこし、あたしも協力してあげようかなって思って――ね♪」

ゾワッ――

体中の神経が際立つ。
内股を走る感触。思わず足を閉ざそうとするが、縛られていて動かない。
「協力って、なにを!?」
「クスッ――
感覚テストよ、感覚――た・だ・し――ふぅ♪」
「きゃぁ」
耳たぶを撫でる暖かい風に身を竦める。
「性感帯のね」

 

停滞した空気の中、衣擦れの音が微かに響く。
輪郭こそハッキリしない紺色の襟の向こうで、白い膨らみが掴まれ歪むのが見える。
「や、やめ……ろ」
絞り出したつもりの声は高く響く。
「あっは――感じ始めているのね」
「んなわけあるか! 俺は男だぞ」
「男――おとこね」
身体を撫でる手の動きが止まった。
「まともに見えもしないのに、鋭い目つきを向けるのね」
ぼやけた視界の向こうで、嫌な笑みを見た気がする。
胸元へと伸ばされてくる腕。逃げるように身を捩るが、縛られてる四肢に痛みが走るだけで満足に動かない。
黙って身構えていれば、聞こえてくるのは布の擦れあう気配。
それが、セーラー服のスカーフを解いていることに気が付いたのは、視界を塞ぐように黒い布地が迫ってきた時だった。
両の眼を塞ぐようにして縛られるスカーフ。

世界が闇に覆われた。
「何をする気だ!」
「別に。ただ、今の先輩の姿を認識させるだけよ」
突然、脇の下が強く押された。押さえる部分は脇から回って身体の上へと向かう。
「これが何だか解ってる?」
視覚を閉ざされたことで過敏になった肌は撫でる指先をトレースし、その『何か』の像を思い描かせる。
「…………」
「そう。ブラよ、ブラジャー」
指はブラジャーの輪郭を服の上からなぞっていた。
「これが肩ひも。ここがアンダーで、ここが――」
「ゃくぃ」
反射的に言葉が零れた。
「トップ♪
不思議なモノでしょ。胸に付ける下着なんて、初めてでしょ?」
クスッとした零れた笑みが響く。
「あなたは女――女の子なのよ。ブラが無いと胸を支えていられない、女の子」
ビクッと身体が跳ねた。
「あら、少し弄っただけで乳首が勃ってきたじゃないの」
さするブラジャーのカップの中の一点で圧迫感が増すのを感じる。
「クッ」
何かを我慢するように歯がみする。
「そんな無理に耐えなくても、身を任せたら? 先輩が感じてくれないことには、感覚テストが出来ないじゃない」
「だ、だれが――ッ!?」
バサバサバサとした音と共に、突然下腹部に風が舞い込んできた。
「知ってる? スカートって下が空いてるのよ」
ショーツが湿っていたのか、風に冷やされ股間が冷たい。
「やめろ!」
叫んでみれば、あっけないほど単純にスカートの裾が放された。重力で舞い落ちるスカートが股を振れる。
「強情ね……
まぁ、それが楽しいんだけど♪」
闇の中、気配が遠のいていったかと思うと、匂いを纏って戻ってきた。
「……紅茶?」
今まで無かった甘い香りが鼻孔をくすぐる。
「そう、紅茶。あたしの奢りだから十分堪能してね」
「きゃぁ!」
いきなり熱さに悲鳴が出る。
「熱い、熱い、熱い!」
服の上から染み込んでくる熱から逃げようと身を大きく動かすが、縛られた手首足首にヒモが食い込むだけで逃れられない。
「あら、ゴメンなさい。温めだから火傷しないとはいえ――今冷やしてあげるわ」

バッシャーン!!

「冷た!」
ぶっかけられた水に全身がずぶ濡れになった。
熱さこそは消えたが、逆に濡れた服がまとわりつき不快感が増す。
「先輩は、人が『自分』を認識するのに一番必要な感覚ってどこだと思う?」
手が濡れた頬を撫でてきた。
「そんなの知るか!」
「あたしはね、先輩。触覚だと思うの」
優しく繊細な指使いは唇へと伸びる。横へと触れる指先からは、まるで儚くも壊れそうな『モノ』を扱っているかのような錯覚さえ抱かせた。
「触覚以外の五感は、対象物の認識しかできないわ。でも、触覚だけは違うと思うの。他の感覚を封じた状態で触れれば、対象を誤魔化すことは簡単。もっともこれは、他の感覚にも入れることだけどね。
でもね、その対象が内側に向けられたら――どう?」

――――ッ!?――――

「痛っ!」
チクリとした鋭い痛みが太股に走る。
「刺された痛みは真実でしょ。痛みが足の存在を実感させないかな? ここに足があるんだ――ってね」
「…………」
「そしてその情報が喩えウソでも内側の感覚は真実になる。丁度今みたいの先輩のようにね」
気配が少し離れる。
「濡れた服がまとわりついている今の先輩なら、自分の身体の輪郭がハッキリと感じ取れるんじゃない?」
「え!?」
――心臓が跳ねた。
言葉と共に意識した感覚が濡れた服を意識させる。
否。
そんな優しいモノじゃない。
肢体にまとわりつく服は、否応なく『今の身体』を理解させる。
男ではあり得ない胸の膨らみ。
細くくびれた腰。
そして――あり得るはずのモノが無くなっている感覚。
「これって!?」
顔を上げるが目隠しが邪魔をして何も見えない。ただ、身体を捩れば余計に服が張り付く。
「あっは――下着が透けて見えて、欲情的よ」
「!?」
「クスッ――
見られてることを意識した途端身体が赤くなるなんて、随分と女の子らしくなってきたわね、先輩♪」
「ば、ばかやろ! 誰が女の子だ、だれ――うぐ」
いきなりのキス。
虚を突かれ、舌が中へと入り込んでくる。際立った感覚は、口内をなめ回すその動きの全てさえも感じ取る。
「知ってます? 女は見られて感じるモノなのよ」
「見られて……」
「そう、見られて。
あたしの視線感じません? 濡れたセーラー服を透かして解るブラ。そして、その下には微かなピンク色の乳首も見えるわね」
くすぐったさを伴った震えが全身に伝う。
「あら、おへそまで見えるわ。それに、スカート越しにすっきりした股の形まで見て取れるね。
クスッ――
ショーツの下の黒い靄まで解りそうね」
反射的に足を動かして『ソレ』を隠そうとする。
もっとも、固定された足は大して動きもせず、隠されることのないそこは見られているという視線を感じ取っていた。
「先輩……これが全て、先輩のモノなんだよ」
「俺のモノ……」
突然、熱さの波が身体を襲って来た。
「な、なんだよ……これ!? 訳分かんないよ! 止めろよ、来るなよ、来るなって!」
「受け入れなさい、先輩。それが、女の感じ方よ」
「だから、俺は男だ!」
「まだ言い張るのね。
でもね、
ここでの先輩は、女。セーラー服を着た可愛い女子高生。
上気して火照った頬にぬめる唇」
ビクッ。
「――や、やめ――」
「整った胸の膨らみ。くびれた細い腰」
触れられても居ないのに、聞かされた言葉の部位が熱くこそばゆくなっていく。
「引き締まったお尻。すらりと伸びた健康そうな太股――先輩、気付いてない?」
「…………」
体の中で荒れ狂う『何か』を押さえつけるのに必至で、いつしかその言葉はノイズとしか認識できなかった。
ただ、その続けられた一言以外は。
「さっきから先輩の声――嬌声に変わってるわよ」

え!?

「あぅふ、ん」
意識した途端、
「やン……うぅん、ぁっはん」
それは頭の中でこだまし始めた。
「あん、ああぁうぅン、ぁぐぅ、あっは、なっ! なんだよ、あぁン、こ、これ!? 身体ン中――あ、ぅん、が震えてる、やだ、やめ――――あうぅ、はぁん、ひん――」
『自分』が零す黄色くも甘い声に呼応するかのように、押さえきれない衝動が増した。尾てい骨の辺りがくすぐったさで浮き上がり、下腹部の中には止められない波が迫ってくる。
「イキなさい、先輩」
「や、ぃや、やだ、やめて――――――――」

――――――――!!

一瞬の浮遊感。そして、全てが白に染まる。
「言葉だけでイクなんて、さすがは少女初心者ね、先輩♪」
手首と足首の圧迫感が無くなっていくが、
「絡んで楽しみたかったけど、それは後ね」
果てた思考ではよく解らない。
「今のデータを検証したら戻ってくるから、それまで休んでいてね。
あ、そうそう。
この世界、処理速度を限界まで速めてあるから」
「何だって!?」
先ほどの浮遊感は何だったのかと思えるほどの重さを感じながら身を起こす。
「外の世界の5分がここの1時間ってとこかな。今日は一日空けてあるから、戻ってきたら永遠にも思える快感を楽しみましょうね――あっ、視力は戻しておくから、女の子を楽しんでいてね、先輩」
自由になった手で目隠しを外せば、玄関へと向かう女子高生――に扮した舞島由宇の後ろ姿があった。
「ま、待て! 俺も出せ――」
慌てて追い掛けようとするが、
「じゃあね♪」
扉は無情にも閉められる。ドアノブへと手を伸ばせばそこにあるべきはずの取っては無い。そして、
「ドアが消えた?」
ノブだけではなく、ドアそのものが部屋から完全に消えていた。
「やられた。舞島のヤツ、領域を隔離しやがったな」
ぐったりと項垂れる――かけた頭を上げ、部屋の時計を見る。
「そう言えば、1時間が5分って言っていたけど……
あいつ、何日俺を閉じこめておく気なんだ?」
思わずクラッとくる意識――
何も考えないようにとずらした視線が捉えたのは、部屋の片隅に置かれた姿見に映る、真っ青な顔をして頬をひくつかせている美少女のへたり込んだ姿だった。

 

 

 

 

「ぁん、やん……」
時折零れる上擦った声。快楽を求めて妖しげにもせわしく動く二本の腕。一本は形の整った胸を歪めるように攻め、もう一本は指先に付いた染み出た粘りけもろとも秘所を軽く弄る。
くちゅ――
ねっとりした音が閉ざされた空間に響く中、
「――クスッ」

!?

上気した顔を驚きに歪め横を向けば、いつの間に入ってきたのか由宇がニタリ顔で立っていた。
その視線は、反射的に胸と股間を隠す腕を見下ろす。
「あれだけ嫌がっていたクセしてサカってるなんて、何だかんだ言って先輩も好きものね」
「ば、ばきゃろー!」
顔を真っ赤にして叫び返す。
「ただの知的好奇心だ、知・的・好・奇・心!」
「ふーん、知的好奇心ね~」
眺め眇める瞳に本心を見抜かれそうに感じ、顔を伏せた。
「シャワーを浴びたら、余韻冷めやらぬ身体に再び火が付いたってトコか」
図星を言われ反射的に聞き返す。
「何故?」
「何故って、シャワーを使った形跡があるし……
あっ、先輩。あたしが先輩に紅茶や水を掛けた理由って解る?」
「そんなの知るかよ」
素っ気なく応える。

「だいたいの理由は先輩にその身体を感じさせる為」
『感じさせる』の一言に、驚きで冷め燻っていた火が少しずつ威力を増してきた。
無意識に悦びを求めて動きそうになる手を、理性をかき集めて押し留める。
「それ以外にも、お風呂に入るように仕向けるためだったのよね。
濡れた服はまとわりついて気持ちが悪い。だから脱ぐ。そして新しい服に着替えようとした先輩だけど、身体がまだ濡れたままなのに気付き――シャワーを考える。
イったばかりの身体は敏感なままだからね。過敏な肌がシャワーの一滴一滴に感じ、納まりかけていた快感が呼び起こされ――」
「…………」
「そして、見事なまでに策にはまってくれた先輩がそこにっと♪」
指さして楽しげに笑う。

「で、今度は何の用なんだ?」
身体に残る疼きを気にしながらも睨み上げる。
「ん~、先輩のオナニ姿を見ていても面白いんだけど……外へ行こうかなって思ってね。準備の方が終わったから誘いに来たの」
その一言に、悦楽を求めて濁っていた思考が完全に醒めた。
「外って、解放してくれるのか!?」
「あ、違う違う。リアルじゃなくてネットよ」
がっくり肩を落とした。
「今度は外で女の子を楽しんで貰おうと思ってるのよね♪」
悪びれもせず浮かべる笑顔に、酷く疲れた気がした。

仮想太陽の下、屋外を歩く二人。
部屋に出る前に由宇に無理矢理着させられた格好は、白い清楚なワンピースに同じ色のつば広の日よけ帽。首元にはワンポイントの黒いリボンのチョーカーが飾られていた。
「なぁ、もう少し服装何とかならないのか?」
生足に履かれたパンプスに慣れないまでも転ばないようにしながら、先を行く由宇を呼び止めるように声を掛ける。
「ジーンズとかTシャツとかさ」
深窓のお嬢様的ファッションに対し、由宇の出で立ちは黒のノースリーブに黒のミニスカートにハイソックス、同系色のスニーカーにキャップと言った全身黒尽くめの活溌そうな格好だった。
「えぇ、せっかく可愛い姿なんだから、おしゃれを楽しまないと損だよ、ユキ」
「ユキ?」
自分を指さして問う。
「最初に言ったでしょ。ここでの先輩はユキだって。だからこれからはユキだって呼ばせて貰うね。
あっ、それとあたしのことは舞島由宇じゃなくて、舞って呼んでね。知り合いにあったら恥ずかしいでしょ?」
艶っぽく横目を眇めて言う。
知り合いの一言に、一瞬身が竦んだ。
確かに、こんな姿を見られたら何を言われるか堪ったものじゃない。
「解った。舞って呼べば良いんだろ?」
「う……ん」
あっさり同意した割に、舞の顔が優れない。
「まだ何かあるのか?」
「それ」
「ん?」
「その言葉遣い」
口を指さして続ける舞。

「せっかく可愛いんだから、言語を矯正する用に女の子の言葉辞典を入れようと思うんだけど、いいかな?」
「勝手にしろ」
ぶっきらぼうに応える。
ここまでやられて、今更言葉遣いが変わろうが些細なことだ。
虚空から言語デバイスとフリーの言葉辞典を幾つか呼び出しながら、色々セッティングしていく舞。
「ただ、先輩の場合直接繋がってるからね。下手にインストールすると脳の方にまで焼き込まれる心配があったんだけど――勝手に入れるね」
「まぁ、まて――――」
付け足された物騒な内容に慌てて止めるが、時既に遅く――

「うわぁ!?」

頭を貫く様に青白いスパークを受けた。
「無茶苦茶しますね。そのような物騒な事は先に言って下さいませ――うわぁ、本当に言葉遣いが変わってますわ」
発せられる言葉と思考言語とのズレにかなりの違和感を感じる。
「どうかな?」
「悪くはありませんね。意識を強く持てばコントロールも出来そうだしな」
意図的に一時だけ戻し、後は流れるままに口調を任せる。
「それでこれからどうなさるおつもりですの?」
「ん~
女の子二人での散歩と言ったら、ウィンドウショッピングかな?」
その言葉通り、ネット中に作られた仮想現実の街並みの散策へと誘う舞。

舞の後ろをおっかなびっくりと歩く姿は、至る所からの視線を感じどんどん身が縮こまっていく。
気分は女装させられて街を歩いているようなモノだ。
「もっとシャキンとしなさいよ。
いい、ユキ! 女は見られて育つモノなのよ」
人差し指を立てながら女の生き様を説明する舞。
「そう言われましても、こう周りから見つめられては恥ずかしゅうて……」
「そんな恥ずかしがってうじうじ俯いていたら、性格まで暗い女になるわよ」
「きゃっ!」
背中を叩かれ、背筋を伸ばす。
「そうそう。胸を張って生きていかないとね。見られてることを意識し、いつでも注目を集めるように生きる。それがいい女の条件よ」
「で、でも……
これはさすがに恥ずかしすぎますよ」
「なんなら、もっと過激な服装にしてみる? 今以上に視線を感じれば、あなたの中の何かが覚醒するかも知れないわよ?」
目一杯首を横に振って断った。
「そう? 扇情的で男を誘うユキってのも面白そうだったんだけど……」
「今のままでいいですから、先を急ぎましょ」
慌てて話題を変え、舞の手を取り駆け出す。

ぽぉ~――
「ユキ?」
振り返れば、ウィンドウに飾られてる振り袖を興味深げに眺めてた。
「何? 着てみたいの?」
近付いてニタリ顔で問う舞。
「別にそぎゃんコト、考えておりませんどすえ」
顔面真っ赤にして否定する。その口調は乱れまくっていた。
「そぎゃんってね」
あまりの言葉遣いに苦笑する。
「フリーの辞書を複数入れたのは間違いだったかな?」
「みたいですね。感情が高まると言葉が乱れますわ」
努めて冷静に受け応えるが、
「ふ~ん。感情の高ぶり――ね♪ やっぱり振り袖に興味があるんじゃない」
「な、何故にそげんこと仰られるでござるか!?」
「その言葉の乱れが理由よ」
眇め、ニヤリと笑う。
「直そうかと思ったけど、丁度いいわ。言葉の乱れを感情の判断基準にさせて貰うから」
「そ、そんなんかんにんや」
「はいはい、かんにんでも何でも良いから。興味を持ったら即実行よ♪」
強引に背中を押して店へと連れ込む。

「ここで脱ぐんですか?」
連れてこられたのは店内の奥。周りには舞以外にも店員が一人いた。
「着物は一人じゃ着付けられないんだから、店員さんの前で脱ぐのは当たり前よ」
「で、でも……」
「でもじゃない。嫌ならあたしが脱がせてあげるわよ」
深く溜息をついて、渋々ワンピースを脱ぐ。
「お客様。下着も外して下さいませ」
「えっ?」
困ったように舞を見れば、
「下着を付けたままだとラインが出るのよ」
「うぅ……」
目尻に涙を浮かべながら、ブラジャーを外しショーツを脱ぐ。一糸まとわぬ姿になれば、二人に見られてることを意識して白い肌が朱に染まる。
半分自棄で目を閉じ、なすがままに着せられていくユキ。固く締められる帯によって腹と胸に圧迫感を覚えた頃――
「はい、終わりましたよ」
店員の終わりの合図と共に瞼を開けた。
「ほぇ……」
鏡の中は華やか且つ雅な女性がいた。これでもし、髪の毛も結っていたら凛とした雰囲気が加わった大和撫子にでもなっていただろう。
鏡の前で少し動いてみれば、ワンピースとは違いかなりの違和感を感じる。
「似合ってるわね♪ それに、仕草が女らしくなってきたかな」
たおやかに手を添えた頬が朱色に染まる。
動きにかなりの制約を課す着物。無理のないように動くため、自然と動作が優雅なものになっていた。
鏡に映る自分の着物姿を魅入るユキ。その表情は満更でもない。
そんなユキの背後に舞が回り込む。

「そうそう。ユキは知ってる?」
「何をです?」
首だけを返してみれば、そこには楽しげに笑う舞の顔があった。
「女性用の着物の脇の下には穴が開いてるってコトよ♪」
「え――――ひゃん!?」
いきなり手を突っ込み、背後から胸をまさぐり始める。
熱い息を首筋に感じ足から力が抜けていく。腰を落としてもなお胸を攻め続ける舞。
「ちょ、ちょっと、止めてくださいませ――ぁはん、ぃや……」
裾が捲り上がり足が見え、着崩れした襟元から肩が露出する。
零れる吐息は熱を帯び、目尻に涙が浮かぶ。
「もっと感じて良いの――」
ゴッツン――
「痛い!」
痛みの走る頭を押さえて振り返れば、店員が静かに佇んでいた。
「お客様、お戯れは困ります」
やんわりとした笑みを浮かべているだけなのに、何故かとてつもない恐怖を感じ取る舞。
「ご、ごめんさない」
姿勢を正し素直に謝るその隣では、ユキは鏡に映った自らの艶姿を見ては慌てて目を反らし、今の出来事を頭の中で反芻しては更にいっそう肌を赤くしていた。

その後も続く二人のウィンドウショッピング。
第三者の前で胸を揉まれたことで吹っ切れたのか、それとも自棄になったのか――手当たり次第に店に入っては試着を繰り返す。
お嬢様風な清楚な装いもあれば、活溌そうな今時のファッション。際どいミニもあればシックなドレス。何故かレオタードや水着があり、さらにはコスプレ系にも手を出しメイド服や巫女装束等も着込んでみたりもした。

「疲れた、ユキ?」
「舞さんが襲ってきましたからね」
着せ替えをすればその都度、何らかの悪戯をしてくる舞。
「でも良い写真を撮らせて貰ったわよ」
その手に、いつの間に撮ったのか多数の写真が現れた。そのどれもが、先ほどまでの着せ替えの写真だ。
「いつ撮っていたんですの!?」
「ん~、面白そうだったからあたし達の周りに画像キャプチャーを仕込んでおいただけよ」
今現在の真正面からの絵が現れた。
「写真の方は後で編集して渡すね」
ピラピラと写真を振りながら続ける。
「それで、おしゃれはどうだった?」
「疲れはしましたが、楽しかったと思います。男性と違って服のバリエーションも多いので面白かったです」
「うんうん。おしゃれは女の子の特権だからね」
感心したように頷く舞。腕の時計を見て、
「もう少し楽しみたかったけど、これでユキ――先輩の拘束は終わりかな」
「え? 5分で1時間ならまだ全然経っていませんと思いますけど?」
数日は拘束されるものだと思っていたから拍子抜けだ。
「あれ? 気付いてなかったんだ。
ネットに出た時に時間圧縮を解除してるのよ。隔離領域ならまだしも、公開領域じゃさすがに時間圧縮を掛けると周りとの時間にズレが生じるからね」
特殊な状況に押し込められていたため、言われるまで、周りと自分が同じ時間に生きてることに気付いていなかった。

「まだ数時間は遊べるけど、リアルの方もさすがにお腹が空いてると思うから、これで終わりよ」
「…………そうなんだ」
落胆色の呟きを聞き逃さなかった舞。悪戯っぽい笑みを浮かべた口を耳元へと近づけ、
「ユキの身体のデータは後で先輩の方にも送っておくから、『女の子』を楽しみたかったらいつでもどうぞ」
囁かれた内容に思わず跳び離れる。
「べ、べつにそんなこと――」
「はいはい。知的好奇心を満たすんじゃないの?」
「あ、うぅ……」
うなり声と共に全身を真っ赤に染め上げる。完全に心の内を見透かされていた。
「では、あたしが支配下に置いていたユキの権限をもど――」
ドッゴ!
目の前で突然倒れ込む舞。
「舞さ――――うっ」
自分も後頭部に衝撃を受けて崩れ落ちる。
朦朧とする意識が途切れる瞬間――空間が揺らぎ何もない所から人が出てくるのを見た気がした。



…………反応が……無い…………
…………さらった……にでもシステ……フリーズした…………ぐ復活すると思……さっさと犯っとけって…………
…………それもそ……どうせ反応し……て喚き散……だけだ…………さ…………

混濁した意識の遙か向こうで何かの囁き声が聞こえ――

ッ!?

激痛が股間から走る。
「ひぎぃ!?
痛い、痛い、痛い、痛い――」
覚醒し始めた意識が、痛みの一色に塗りつぶされる。
「なんだ、この女?
もしかして、バイブでも突っ込んでいたのか?」
「清楚そうな格好していた実は淫乱娘だったとか?」
「バイブ突っ込んでるなら、楽しませてやらないとな」
後ろから突き上げられる動きが一段と勢いを早め、
「痛い! 痛い! 止めて! お願いですから、止めて下さい!!」
それに呼応する形で痛みが増した。
涙に鼻水まで流しながら嗚咽する。そこに悦びはなく、あるのは訳解らない貫かれた痛みのみ。
何とか逃げようとするが、両の手は錆びた鉄製の階段に縛り付けられ、後ろに突き出された腰は動かないようにがっちりと掴まえられていた。
「すげーぞ、こいつの絞まり具合! まるで処女みたいだな」
「処女がバイブなんて突っ込んで彷徨っているかよ。どうせ、がばがばの淫乱女がぶっといのを刺してるんだろうよ」
「いや、男がケツの穴にバイブ刺してるんじゃないのか? この間襲った中にそう言うのが混じっていたぞ」
「気持ち悪いこと言うなよ。せっかく見栄えは良いんだからさ」
「んなコトいいから、さっさと終わらせろよ。次は俺のば――――――どべっし!」
鈍い音を上げて見ていた男の一人が吹き飛んだ。

「なん――――うわぁっ!!」
振り返ったもう一人は、顔面から壁に打ち付けられた。
「誰だ!?」
襲っていた最後の一人が叫ぶ。
ただその腰はいまだ攻め続け、ユキの口からは既に言葉は無い。あまりの激痛に失神してるようだ。
「良くも、あたしの先輩を襲ってくれたわね! さっきは不意を喰らったけど、今度はそうはさせないんだから!!」
「――ぶべっ!」
ハイキックを顔面に受け、ユキの秘所から逸物を引き抜く形で吹き飛んだ。
そのままの殴る蹴るの一方的な暴行に、三人が三人、ログアウトで難を逃れようと虚空にシステムウィンドウを呼び出したが、そこには《Lock》の文字が重なっていた。
「ログアウトなんてさせないわよ。
既にあんた達三人はあたしの支配下なんだから」
逃げ場を失った三人。反撃しようとするが身体が動かない。

パッチン!

舞が指を鳴らすと固まっていた三人の男達は宙に浮き上がり、壁を背に並んで腰を下ろした。
「どれだけ痛めつけたところで、フィードバック装置が無ければリアルには意味が無かったわね」
殴るだけ殴って気は落ち着いてるが、怒りはまだ納まらない。
触れてもいないのに三人のズボンは脱がされ、ペニスが顕わになる。
それを一瞥しては、嫌悪に眉を顰める舞。
「確か、ホール(疑似SEXの男性器専用フィードバック装置)は付けていたようだけど――――あたしの許可無くユキを虐めた罰よ」

パッチン!

再度指を鳴らせば、
「な、なんだよ、コレ!?」
「おい、勝手にあそこが――」
「と、止めてくれよ!!」
見えない力が締め上げ始めた。通常の使用方法ではあり得ないまでの刺激に、男達の先端から白い液体が勢いよく出る。それでもまだ伸縮運動は止まらない。
「あんた達のホールを支配させて貰ったわ。そんなにお盛んならそこでずっとイってなさい」
そう言い残して、腕の戒めを解いたユキを背中におぶさりながら路地裏から立ち去る舞。
ふと足を止め、
「あ、そうそう。丸一日はずっと動くように設定しておいたから、擦り剥きたくなければ早く誰かに見つけて貰うコトね」
思い出したようにそう付け加えた。

「どう? 落ち着いた?」
飲んでいた缶ジュースを見つめながらコクリと小さく頷く。裏路地から助けられ、今は通りの中心にある噴水の縁に腰掛けていた。
それでも完全に立ち直れないのか、
「何なのよ、あの人達は……」
力無く呟いた。
少しだけ女の子の姿で歩くことに気持ちよさを感じていたらこの仕打ちだ。気分は一気に下降気味。
「非18禁エリアで暴行行為を働いてる変態よ」
嫌悪顕わに吐き捨てる舞。
「そのクセ、反撃を怖がってタイツ(装着型全身一体フィードバック装置)を着込まず、ホールなんて使うチキン。
あれって、装着部分のみに仮想体験を反映させるでしょ? あいつらに取っては自分が楽しめればそれでいい――言ってみれば見た目がいいおかずになるお人形が欲しいだけのクズよ」
汚らわしいモノに触れたとばかりに悪態をつく。
「災難だったね。
普通なら、あの手の装置は互換性のあるモノじゃないと同調はしないようになってるから、あたしや先輩が使ってるヘッドギアタイプ(脳波干渉型電脳ダイブ装置)じゃ同調はしないはずなんだけど……
先輩の作った人格投影システムのフィードバック率が高かったのが原因ね。周囲の干渉情報を疑似感覚として全て脳にフィードバックしてくれるから、装置の有無関係なく強引に犯された痛みまでユキに感じさせたのよ」
説明されるまでもなく、それは解っていた。
でも、解りたくもなかった。
いまだヒリヒリする股間の痺れ。まさか自分の開発したシステムでこんな目に合うとはは思いも寄らなかった。

ブルッ――
突然小さく震え、隣の舞にすり寄る。
「どうしたの?」
「べ、べつに……
ただ、男の人の視線が恐いだけだから」
ざっと見渡せば、通りを歩く人達の中から数人の視線を感じた。
「また、あんなコトされると思ったら恐くて」
「あっ」
顔を押さえ気まずそうに声を零す。少し考え、
「ちょっとついてきて」
腕を取り、通りの先へと引っ張る。

連れてこられたのは、妖しげなピンク色に覆われた一室。
「こ、ここって!?」
「ユキの思ってるとおり――ラブホテルよ」
正確には電脳世界における18禁エリアの隔離ルーム。
「何をするのですか?」
「ここでするコトと言ったら一つしかないでしょ♪」
艶っぽい笑みに、思わず後ずさる。
そんなことはお構いなく、言葉を続ける舞。
「このままユキ――先輩を解放すると男性恐怖症にもなりかねないからね。
別に、男嫌いになるぐらいなら問題ないんだけど……自分のあそこにまで嫌悪していたりしていたら、すっこしばっかりやばいかなって思うの」
「…………」
指摘に何も返せない。
確かに、レイプしてきた男達と同じモノが自分にも付いていると考えると、限りなく鬱になる。

「そうなると、悪戯をしたあたしとしてはさすがに心苦しいしってコトで、先輩のトラウマを無くしてあげようかな――って」
一歩前へと出れば、一歩後ずさる。逃げ場を無くすように角へと追いやる舞だったが、最後の一歩で足が止まる。
「――と、このままだとただのレズになって、男性恐怖症は消えなかったわね」
ホッと胸を撫で下ろす暇も無く、
「先輩、男の好みってある?」
「あるわけないでしょ!」
反射的に叫び返す。
「では、こちらで選ぶね」

パッチン!

指を鳴らすと、舞の姿が揺らぎ男性のものへとモーフィングを始めた。
「こんなモノかな」
そこに現れたのは、ジーンズにシャツ姿の細身の背の高い何処にでもいそうな男性。ただ、どこか本来の自分に似てる気がしたユキだった。もっともかなりこちらの方が美形だが……
「一応あたし――じゃなかった、俺の理想な男性像になるかな」
姿に合わせた口調に変える舞――舞島。身体の調子を確かめるように少し動かすと、ズボンのポケットからタブレットを取りだし一つのカプセルを飲み込む。
「準備オッケイ♪」
止まっていた足を進めれば、
「ヒィッ」
壁を背に爪先だって逃げようとする。
「大丈夫、優しくするから」
そう言いつつも強引に腕を取り、自分の胸へと引きづり込む。

「きゃぁっ」
胸板に当たり小さく悲鳴を上げる。
反射的に上げた顔に舞島の口が重なってきた。
ねっとりと絡み付いてくる舌。濃厚なキスは、女同士の時と違い荒々しさが混ざっていた。
ユキの瞳から力が抜けてきた頃、
ハッと気付き――
「ば、ばかやろ。勝手に何するんだよ」
無理矢理引き離しては、口を拭ってそっぽを向く。
突然のキスに頭が真っ白になったのか、口調が男のそれに戻っていた。
「フッ。脳の回路がショートするような快感を味あわせてあげるよ」
クルリと背後に回り込むと、そこから胸を揉み始める。
視線の下で二つの膨らみは形を歪め、着込んでいるワンピースには指の動きに沿って皺が走る。
「や、やめろよ! だから、やめてろってば!」
「だーめ♪」
急所を攻められてるため力が出ず、叫ぶ声が上擦る。優しく、時には荒々しい力加減は、女の胸の弱点を心得ていた。
「ひぃん!」
いきなり同時に両の乳首を摘まれた。
尾てい骨まで一気に痺れが走り、足腰からは力が抜ける。
「お願いだから、やめてくれ」
ブルブルと小刻みに震え、涙に潤ませた瞳で懇願する。
「ここで止めたら、キミは一生男性恐怖症――自分のあそこにすら嫌悪するようになるんだぞ」

「そんなん、戻ってみなければ解らないだろ。男に戻れば何ともないかも知れないんだし」
「だけど、それはあくまで仮定だろ?
責任の一端を担ってる者としては、ちゃんとした形で戻したいんだよね。
下手して不能になっていたりしたらあたしも困るし……」
「え?」
続けた呟きに意識が向いた瞬間、腕を掴まれ背後へと回される。
「だから、キミがコレを受け入れられれば、トラウマは無くなったって俺も安心できるんだよ」
その手のひらにジーンズ越しの膨らみが触れられた。何なのか解り、思わず手を引っ込めようとするが、掴まれた腕の束縛は強く動こうとしない。
狭い空間で形こそ定かではないが、それが張り切れんばかりに勃とうとしている男性器なのは、経験上体験していた。
「これから俺のこいつでユキ――キミの身体を貫く」
レイプされた時の痛みが思い出され、顔が青色に染まる。
「そんなに恐いなら、ユキもこいつを飲むといい」
「え?」
半開きの口に何かを入れられ、そのまま押さえ込まれた。
舌で触れれば、それが先ほど舞島自身が飲んだカプセルと同じモノだと解る。ただし、それが何であるのか解らない以上飲み込むかどうか躊躇していれば、次第に表面が溶け唾液に混じって喉の方へと流れ込んでいく。
ゴックン。
溶け始めてる以上、耐えたところで吸収は防げないと諦め、潔く飲み込んでみれば――
身体の芯が一気に熱くなってきた。
熱は中心から広まり末端の指先まで伝わる。身体全体が微熱に覆われた頃、触れられてもいないのに胸からは揉まれていた時以上の快感が波打つ。
ワンピースの上からもくっきりと解る乳首の尖り。
「なんだよ、これ? 何を飲ませたんだよ!?」

「ドラッグウィルス♪ さっきの三人が持っていたから失敬してきたんだ」
それはヘッドギアのフィードバック率を高めより強く感じさせるためのウィルスであり、主に疑似SEXを楽しむ輩が使ったりする電脳麻薬の一種。
「だから、俺のあそこもビンビンなんだよ」
ズボンのファスナーを降ろし、出されたそれは反りかえらんばかりに勃起していた。
舞島の男性器を目の前にしては、嫌だとばかりに首を横に振るユキ。
「そ、そんなの入らないってば。絶対に無理だよ」
「スカートにそんな染みを作って言っても、説得力なんて無いさ」
「え?」
注意が下へと向いた瞬間、身体を押されベットへと倒れ込む。
舞い上がったスカートをそのまま捲り上げる舞島。
濡れたショーツを剥ぎ取り、そっと指先で撫でる。
「――ぁん」
嬌声を上げ、シーツを握る。
「しっかり受け入れ態勢出来てるじゃないか」
「受け入れる?
俺が男を受け入れる!? 何を――」
バカな――と続けるはずの言葉は飲み込まれた。
何か熱いモノが股間に触れたのが解る。
「行くよ、ユキ」
同意求める前に、それはずぶりと入り込んでくる。

あり得ない。
あり得ることがあっていいはずがない現実だ。
先ほどのレイプでは痛みが先行しすぎてよく解っていなかったが、今はハッキリと感じ取っていた。自分の中へと潜り込んでくる異物を。
それは酷く違和感を感じるモノ。
なのに、
何故か――
男としてはあり得ない器官がその進入に歓喜するように体の中で蠢く。
もっと、もっと、もっと――欲しい。それが欲しい。誰にも渡したくない。だから、それが欲しい。
現実(思考)が仮想(身体)に支配され、本来あり得るはずのない虚構の本能が目覚め始めた。
「ぁん、あん、はぁん、ぅん、いい、いいよ……もっと、つよく、つよく突いて、感じる、感じるんだよ、身体ん中が感じるんだよ――――」

――――ッ!!

半狂乱に叫びだしたかと思うと、その力強い一突きに身体が一度硬直し、
果てた。
暗闇の中言葉で犯された時よりも遙かに激しく、そして――
「気持ちよかった……」
本音が紡がれた。
身体に余韻こそ残っているが、全てが終わった。そう思い込んでいたユキ。女としての初体験のため、この時のユキは気付いてなかった。それがまだ軽度な快感であることを。
そしてすぐさま知ることになる。女の快感はその後が続くことを――

くたーっと弛緩してる身体に更なる振動が襲ってきた。慌てて身を起こせば、いまだ接続したままの腰を動かす舞島がいた。
「ちょ、ちょっと!? 何するんだ――あぁんぅ」
「何って、第二ラウンドに決まってるじゃないか♪ それに俺はまだイってないんだから」
リズミカルに、それでいて先ほど以上に荒々しく突いてくる。
余韻冷めやらぬ前に更なる刺激が髄を駆け巡る。
「や、やめろ、やろって。
俺はもうイったんだか…………はぁん、あぁああん……
な、なんで感じるんだよ。もうイったんだ…………あぁん」
シーツを握りしめて耐えようとするが、
「これが、これが、女の快感……」
「そうだ。それが、女の快感だ。男と違い、刺激すれば際限なく続く快感。それが女の身体だ」
「女の身体……あぁ、あん、はぁん――――」
一度、女を意識した以上、理性は意味を成さなかった。

既に気持ちいいのかどうかも解らない。
ただ、そこからうち寄せる刺激は体中を駆け巡り、理性の全てを吹き飛ばしていた。
考えることすらも億劫になり、漠然と快感のみを求めて腰を振る。
いつしか体勢は二転三転し、いつしか裸の女は裸の男の身体の上でよがり続けていた。
「――――!!」
音にすらなってない叫び声を上げ、何十回目の頂点に達したユキは完全に身体の力を失い、男の身体からずり落ち、ベットの上に倒れ込んだ。

「やっと終わったか」
気怠そうに立ち上がる舞島。途中で身体のシンクロを断って人形と化していたから良かったものの、搾りに搾り取られ身体はかなり疲弊していた。これがもし現実だったら干涸らびていたかも知れない。
ベットの上で倒れてるユキを横目に、揺らぎと共に元の女子高生の姿に戻る――舞。
「せっかくだから、男に戻って貰って、あたしも楽しませて貰おうと思ったけど……これは無理そうね」
見下ろせば、涙と涎を垂れ流し、下の口から白い液体を零れさせながら太股を痙攣させていた。残念そうに思いながらちょっと身体に触れてみれば、ピクリと大きく跳ね上がる。
どうやら、またイった様だ。
「しっかし、随分とイったモノね」
ひい、ふう、みぃと指折り数えたかと思うと、
「こんなに女の子としてイって、生身の方大丈夫か――――」
こめかみに指を当て、目を閉じて何かを探ろうとした舞の顔が青くなった。
「緊急事態よ、先輩! 今すぐリアルに戻すね」
「…………え?」
気怠そうにベットの上で顔だけを上げた瞬間、意識がとんだ。



(舞島のヤツ、何だってんだ……)
脳波トレース&フィードバック用のヘッドギアを外す。
眼前に広がるのは見慣れた自室。ゆっくりと身を起こせば、
(濡れてる?)
股間に湿り気を感じた。
あれだけ性感帯を刺激されたのだ。リアルの方でも夢精の一つもしていておかしくない。事実、顔の方には涙や涎の濡れた跡があった。
近くにあったタオルで顔を拭きながら下を向けば、

「――――ッ!?」
目に入るそれに、固まる。
俯いた先に見えるのは、Tシャツの下で自己主張するように張り詰めた双丘――襟元を引っ張って覗き込めば、嫌味の無い大きさの美乳の膨らみが――
慌ててその下を窺えば、お漏らししたような染みを作ったジーンズ。ベルトを外し、ジーンズと一緒にトランクスを降ろせば、そこには肝心要の男性のシンボルが無く、閉じた割れ目から煌めく液体が垂れていた。
唖然と横を向けば、点いてないTVの黒い画面に電脳世界での髪の長い女の子の姿が映り込んでいた。
「な、なに……これ!?」
引きつりながら腰を下ろしたそこへ、
『やっほ、先輩』
モニターの一つに、恐縮そうに縮こまって手を上げて応える由宇の姿が現れた。
「これは、どう言うコトなんですか、由宇さ――――えっ!?」
咄嗟に両の手で口を押さえる。感情の高ぶりで消えたと思っていた言語矯正までもがしっかりリアルに反映していた。
頭を振って、言葉遣いを強引に切り替える。
「舞島、これはどう言うコトなんだ!」
『それが……先輩の作った人格投影システムのフィードバックが強力すぎたのか、あちらで感じたモノ全てをリアルにまで反映させたみたいなのよね』
「リアルにまで反映って……」
俯き小さく肩を振るわす。
「――ぃや」
『ゴメンね、先輩。あたしの悪戯のために――』
「やったッ!!」
殊勝に謝れば、返ってきたのは歓喜の歓声。

『え!? あ、あの、先輩……怒ってないの?』
「怒るって、何故?
電脳世界の事象がフィードバックするなんて、世紀の発明なんだぞ、世紀の大発明! 上手くいけば大病だって完治するし、性転換も自由だ。これはハッキリ言って、ノーベル賞だよ、ノーベル賞ものの発明だ!」
奇声を上げて狭い部屋を喜び駆け回る。
『で、でも先輩。女のままじゃ……』
「男になんていつでも戻れるって。お前がしてくれたのと同じコトを、今度は男の仮想体でやればいいだけじゃないか♪
もっとも、ちゃんとこの身体のデータ取りしたいから、しばらくはこのままだな――あっ、そうそう。この身体用の服も揃えたいから、代金の半分ぐらいは出してくれよ。お前の悪戯が原因なんだからさ♪」
『はぁ……それぐらいはかまわないけど』
喜び嬉しがってる美少女の姿を目の当たりにしては続けるべき言葉を飲み込み、心の内で呟いた――

『でもね、先輩。
男の性感帯は女と違って一点に集中しているから、今の『自分』を塗り替えるほど強烈なフィードバックが出来ても……一部分が男性化する可能性の方が高い気がするのよね』と。

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