死神の間違い

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「ちょっと、すいません」
通勤途中の鳥頭達郎は、駅の改札口から出てすぐ、見知らぬ男に声をかけられた。
男はしゃれこうべ姿で鎌を持ち、黒いフードをかぶった怪しい人物である。
(コスプレマニアかな。あんまり見つめちゃまずいか)
なるべく相手を刺激せぬよう、達郎は対応する事に決めた。
それでなくとも、出社時間が迫っている。あまり手間を取りたくは無い。

「何か御用でしょうか」
「あなた、鳥頭達郎さんですね」
「そうです」
「良かった。私、実は死神でして。あなたを迎えに来たんですよ」

なんと、男は死神だった。そう言われればそれっぽいが、一体何の用であろうかと達郎が思っていると、
「あなた、一時間後に死にます。死因は、笑い死に」
死神はつとめて穏やかに言った。

「え!そ、それは、本当ですか?」
「ええ。あなたは一時間後、風でかつらを飛ばされた男性の姿を見て、笑い死にます」
ガツンと頭を殴られたような衝撃が達郎を襲う。かつらを飛ばされた男の姿を見て、俺は死ぬ。
まさか、この若さで。達郎の膝が震え出した。

「死神さん、何とかなりませんか。実は僕、二十五にもなって童貞なんです。こんなに早く死にたくない」
「そんな事、私に言われてもねえ」
「お願いします」
死にたくない一心で、がばと頭を下げる達郎。それを見た死神は、ううむと唸った後、
「分かりました。何とかしましょう」
そう言って、懐から分厚い手帳を取り出した。

「実は今日、手違いで二人ほど死んでるんです」
死神は手帳を見ながら言った。
「手違いとは?」
「まあ、あの世でも把握してない死人が出たって事です。例えば、何らかのアクシデントで急逝した人とか、死ぬ予定じゃなかったのに、死んじゃった人。私が管轄しているエリアで、二人ほどそういうお方が出たんですよ」
「それと僕になんの関係が?」
「死ぬ予定じゃない人があの世に行くと、手続きが煩雑になるんです。データベースを書き直したりして、大変なんですよ。要するに、面倒臭い」

随分と人間味のある話だ。死神なのに、と達郎は思った。

「達郎さんは、今日あの世へ行かれるリストに入ってますので、死は免れません。ただ、死ぬ予定じゃない人の体に魂を入れる事は出来ます。要するに生まれ変わりですね」
死神は人差し指を立てて、とうとうと説明をする。その姿はまるで、教師が生徒を諭すような有り様だった。

「それはつまり、僕が他の誰かになるって事ですか」
「そうです。ちなみに、前述した二人の特徴を申し上げますと、一人は五十二歳の配管工です。なんとこの方は、世界あぶら足選手権で優勝した事があるそうです。ギネスにも載ってます。ある意味、超人ですね」
嫌な超人だな、と達郎は思った。そして、出来ればそんな人に生まれ変わるのは勘弁だとも思う。
まあ、二十五歳の青年にしたら、当たり前の事である。

「死神さん、もう一人は?」
「もう一人は、え~と・・・十七歳の女子高生ですね。アイドル志望で、地元の公立高校に通ってます。可愛い子ですよ」
達郎は言葉を失った。なんと、選択肢はあぶら足の中年男か、女子高生しかない。
「そのどちらかしかないんですか?」
「ありません。残念ですが」
死神は手帳を閉じた。

「私は人間の魂を離脱させる能力があります。それを使って、達郎さんの魂をぶっこ抜いちゃいます。そうしたら、死ぬ予定じゃなかった人の体に、その魂を入れる。その後、魂の抜け殻となった達郎さんの体に相手の魂を入れて、終了です。これで、達郎さんは晴れて生まれ変わり、私は達郎さんの体から魂を抜いて、お仕事完了ってな訳です」

ずい、と死神が達郎に迫る。早く決めろと言っているのだ。

「どちらにします?ミスターあぶら足と、女子高生」
「う、うう・・・」
「さあ、さあ」
「どっちにしよう・・・」
「早くしないと、間に合わなくなりますよ、達郎さん。今が決断の時!」
「うわあ───ッ!」

意識が遠のきかけた時、達郎は『女子高生』と叫んでいた。あぶら足よりもマシ。それが理由だった。

「はッ!」
何か、ジェットコースターにでも乗ったような気分だった。気がつけば、達郎は見も知らぬ街の中にいた。
「ここは・・・?」
つい先ほどまで、会社の近くで死神と話し込んでいたはず。しかし、辺りを見回すと制服に身を包んだ学生がたくさん居て、自分もその中の一人になっているではないか。しかも、着ているのはセーラー服だった。

『達郎さん』
脳の中に直接、声が響いた。あの死神である。
「あっ、死神さん、どこに居るんですか?それに、これは一体?」
『達郎さんは死ぬ予定じゃなくなったので、もう私の姿は見えないんですよ。目の前に居るんですがね。最後に私からのアドバイス。達郎さんはこれから十七歳の女の子として生きていくしかありません。まず、今の自分を鏡で見て、その姿を確かめてください。あと、持ち物で名前やステータスの確認も忘れずに・・・それじゃ・・・』

死神の言葉は、語尾がだんだんかすれていった。今はどれだけ耳を澄ましても、達郎には何も聞こえない。

「生まれ変わった・・・マジで?」
達郎が身に着けているのは、いかにも公立高校らしい地味なセーラー服だった。手には学生カバン。胸ポケットには女の子らしく、小さな手鏡が入っている。達郎は早速それを使って、生まれ変わった己の顔を見た。

「顔も変わってる・・・可愛い・・・」
新たな顔は細面で色が白く、目もパッチリとしている。髪は肩まで伸ばしたストレートタイプだった。脱色はしておらず、いわゆる今風の女子高生とは一線を画している。
「僕、本当に女子高生になったんだ」
二十五歳の童貞青年から、女子高生に──生への渇望の結果とはいえ、達郎は生まれ変わった自分の姿に驚きを隠せなかった。

「しかし、これからどうすればいいんだろう」
周りには、自分と同じ制服を着た女子高生がたくさん居た。皆、同じ方向を目指して歩いている事を考えると、その先に学校があると考えて良い。
とりあえず、達郎は皆に混じって、歩き出した。その途中で、カバンの中から生徒手帳と携帯電話、その他もろもろの所持品を取り出し、新たな自分が小坂さくらという名前である事を知った。
そして、この近くにある公立高校の二年生だという事も知る。

「しかし、股の下がスースーするな・・・スカートって、心もとないなあ」
達郎は歩き出してすぐ、下半身の頼りなさを嘆いた。長身で足が長かった以前の達郎は、大股で歩くのが普通だった。しかし、生地の薄いスカートを穿いた女性となった今では、それがままならない。

「パンツ見えてないかな・・・ケツの割れ目にまで風を感じるぞ。女の子って、大変なんだな」
気がつけば、スカートのお尻部分を手で抑えながら歩いていた。階段などで女子高生がそうしているのは、このためなのだろうか。達郎は早速、女性のことわりを肌で感じた。

「さくら」
不意に誰かが誰かの名を呼んだ。いや、よく考えれば、新生達郎の名前ではないか。しかし、達郎は下半身にばかり注意がいって、それに気づかない。
「さくらってば!」
達郎が背後から尻を蹴られた。蹴ったのは、同じ年頃の女子高生だった。
「いてえ!」
「何が、いてえ!よ。お尻ばっかり触って、痔でも患ったの?」
達郎が振り返ると、そこには髪の短い少女が居た。セーラー服の袖をまくり、スカートの裾からはハーフパンツが見えている。おそらく小坂さくらの友達であろう、一見してスポーツ少女だと分かる雰囲気を持っている。

「誰が痔だ!」
「なあに、その変な言葉遣い・・・さくらにしちゃ、変ね」
ここで達郎は、ハッとなった。今、自分は小坂さくらという、十七歳の乙女である。尻を蹴られても、それ相応の接し方をしなければいけない。

「ううん、いつものさくらよ。オホホホ・・・ちなみに、あなたはどちら様でしたっけ」
これでも目いっぱい気取ったつもりの達郎。しかし、少女は訝しげな目をしている。
「あのね、親友の名前を忘れたの?今居聡子よ」
ふむ、と達郎は頷いた。どうやらこの子は、さくらの友達らしい。ならば、情報を仕入れる相手としては、好都合ではないか。達郎は早速、策を練る事にした。

「そうだった、聡子、聡子。ちょっとど忘れしちゃって・・・」
「大丈夫なの?そう言えば今朝、ツチノコに噛まれて失神したって聞いたけど」
「え、ツチノコに?あたしが?」
「うん。あなたのお母さんから、電話があったのよ。さくらが飼ってたツチノコに噛まれて、意識不明になったって・・・でも、その後すぐ、何かに取り憑かれたように立ち上がって、学校へ行ったって聞いたわ」
達郎は死神が言ってた事を思い出す。小坂さくらは今日、何らかのアクシデントで死んだという。きっと原因はそれであろう。死んださくらが動き出したのは、死神が何か策したに違いない。達郎はそう結論付けた。

「そうだった、そうだった。ああ、それで、ついでにあたしの家ってどこだっけ?この近くだったかな」
「・・・あなた、住んでる所も忘れたの?」
「そうみたい。ツチノコショックってやつかな、エヘへ」
「ふぐり町の玉袋三丁目じゃないの。成金丸出しの、大きなお屋敷」
「へえ、そうなのか。ふぐり町って、すぐ隣じゃないの。近くて良かった」

達郎は生徒手帳を取り出し、聡子に問い掛けた。これからは、小坂さくらになりきらねばならぬのだ。住所は知っておかねばなるまい。それ以外にも、聞きたい事は山ほどある。しかし、ここで聡子の顔が険しくなった。
「何かおかしい」
眉を吊り上げ、達郎に迫る聡子。さすがに親友だけあって、さくらの異常に気がついたようだ。

「へ?おかしいって、何が」
「全体的に。さくらは、今のあんたみたいにがに股で立たない」
聡子が達郎の足元を指差した。なるほど、彼女が言う通り、達郎はずいぶんがに股になっている。傍目に見ても、これはおかしい。

「あんた、さくらじゃない!」
「な、何を言ってるの、聡子ちゃん・・・」
「ほら、またおかしい!さくらはあたしの事、聡子って呼び捨てにするもの!あなた、何者?」
「やばい!」

達郎は反射的に逃げ出していた。学校とは逆の方向だったが、それも仕方が無い。
「待て、ニセさくら!」
「待たない!」
逃げる達郎に、追う聡子。しかし、追いかけっこなら、見るからに運動神経抜群という感じの聡子に軍配が上がりそう。もっとも、運の強さで言えば、九死に一生を得た達郎も負けてはいない。

「タクシー!どれでもいいから止まって!」
大通りに出たとき、達郎はさっと手を上げた。すると、すぐさま一台の車が止まった。
大きなヴァンタイプの車である。ガラス面がスモーク化されて、いささか物々しいが、背に聡子が迫ってくる達郎は、兎にも角にも縋るしかなかった。
「追われてるの、乗せて!」
達郎がそう言うと、ヴァンのスライドドアが開いた。その中から、誰かが手招きをしている。乗れと言っているらしい。
「ありがとう!」
ヴァンは達郎を乗せると、急発進した。バックミラーには、聡子が達郎を見失ったように、キョロキョロと辺りを見回す姿が映った。どうやら、逃げきれたようだ。
「ふう・・・危なかった」
とりあえずは一安心・・・と、達郎は汗を手で拭った。しかし、その瞬間、達郎の手は何者かに抑えられた。

「な、何?何だ?」
ヴァンのリヤシートが倒され、達郎は両手をバンザイ状態で戒められた。室内はスモークガラスのせいで薄暗く、中の状況が分かりにくい。だが、耳元で響く誰かの声が、女子高生となった達郎の身に危機が迫っている事を知らせてくれた。
「美味しそうな女子高生が、わざわざ飛び込んで来てくれたぜ。ナンパの手間が省けたな」
「逃げられないように、剥いちまえ」

その言葉を聞いた時、達郎はあッ!と声を漏らした。自分は今、十七歳の女子高生なのである。逃げる事に必死で、それを忘れていたのだ。
「ちょ、ちょっと!待って!」
達郎の左右に、一人ずつ男がいた。それぞれが車の中へ飛び込んできた女子高生の手を抑えながら、制服を脱がせにかかっている。達郎のスカートの中に、男の手が伸びてきた。

「や、やめろって!」
達郎は必死に抗い、足をもじらせる。しかし、女子高生に生まれ変わった身で、男二人にかなうわけはなく、あっという間に下着を剥かれてしまった。

「おー、女子高生の生下着だぜ」
「とっとけよ。高く売れるぜ」
達郎の足首から、白いショーツが抜かれた。ついで、男たちはセーラー服の上から、柔らかな乳房を揉み始める。
「ひゃああ!な、何すんの?」
荒々しい愛撫だった。ブラジャーを制服ごと毟り取らんばかりの気の入れようだった。

「大きすぎず、小さすぎず。いいおっぱいだな」
「まあな。こいつはいい拾い物をしたぜ」
男たちの手が、セーラー服の胸元を侵した。生の乳房を掴み、その頂点にある小さな蕾をクリクリと扱く。
「うう・・・やめてくれ」
乳首を強く引っ張られ、その後、甘く扱かれると達郎の抗う力が弱くなった。何か、乳首の先が股間のどこかに直結しているような疼きがある。それが、クリトリスだと分かるのは、これからすぐ後の事だった。
(メ、メチャメチャ気持ち良い・・・感じるって、こういう事なんだな・・・)
男たちの愛撫に身を悶えさせ、我を失いかける達郎。特にクリトリスは多感で、軽く弄られるだけでも宙に浮いたような気持ちになった。しかも、今は相手が二人。女の急所をすべて責める事が出来る。はっきり言って達郎は今、堕ちる寸前であった。

「お前、ずいぶん濡れるな。オマンコ、気持ち良いか」
「・・・うん」
男の問いかけに、達郎はぼんやりと返事をする。もはや何を尋ねられても、うつろな言葉しか返せない。
「チンポ入れて欲しいだろう」
「・・・うん」
「そうか。じゃあ、入れてやるからな」
「・・・うん」

リヤシートの左側に居た男が、達郎の体に圧し掛かった。もう一人は、乳房を懸命に吸っている。ヴァンを運転中の男は、後ろの様子をバックミラーでチラチラと見ていた。黙ってはいるが、やはり気になるらしい。
(な、何か入って来る!)
その瞬間は、あっという間だった。何か、肉で出来た筒のような物が、自分の中へ入って来る。不思議な感覚だった。達郎は反射的に背を反らし、入って来る何かと角度を合わせるように、腰を浮かした。
「入ったぞ。キツキツだけど、処女じゃねえな」
男がずいっと腰を突き出し、己の分身をすべて達郎の中へ埋めた。そして、肉付き具合を確かめるように、そろそろと腰を引く。

「ああ・・・」
男の肉筒が出入りする感覚は、たまらない物だった。出来れば、もう一度味わいたい。その思いから、達郎は足を男の腰に絡ませる。
「も、もっと・・・」
「こいつ、離れたくないってよ」
「可愛い顔して好き者か。こりゃマジで、お宝ゲットだな」
男たちが顔をつき合わせて笑った。

「三人でとことん輪姦してやるよ」
そう言った男の肉筒が、いよいよ本格的な抽送を開始した。十分に湿りを帯びた達郎の女は、二つの生肉が交わる音を奏で始める。
「ああ・・・あ~・・・」
達郎は喘ぐ言葉しか発しなかった。男に肉筒を突き込まれ、ひいひいと鳴く。今はそれだけしか出来なかった。そうして、ヴァンは次第に人気の無い道を走るようになった。

「あれ?」
ここはどこだろう。達郎は辺りを見回した。滑り台やブランコがある。自分はベンチで寝ていた。どうやらここは公園らしいと、達郎は見当をつける。

「いつ、ここへ?」
空はすでに薄暗く、夕暮れが迫っていた。体をまさぐると、セーラー服を着ていた。ベンチの脇には、学生カバンもある。それで達郎は、今も自分が小坂さくらという、十七歳の女子高生である事を知った。
「やっぱり、夢じゃなかったか」
下着の中がべたついていた。何があったのかは、思い出したくない。しかし、下半身に残る疼きが、嫌でもそれを思い出させてくれる。

ヴァンに乗った達郎は、車の中で犯された後、郊外に有るラブホテルへ連れ込まれた。
そこで、三人の男たちに代わる代わる犯されたのである。
「腰が痛い。無茶されたな」
女に生まれ変わった達郎は、その快楽に溺れてしまった。三人の男は次々に、達郎を登りつめさせてくれた。そのお礼とばかりに、男たちの肉筒を喰らわんばかりにしゃぶった。
その時の自分は、まるっきり女だったと思う。達郎の心は、複雑な気持ちの中でバランスを失いかけた、やじろべえのように揺れ動く。

「あいつら、写真とか撮ってたけど、大丈夫かなあ」
今の達郎は体こそ女だが、心は男である。しかし、三人に犯された時は、間違い無く心も体も女だった。三本の肉筒で屈せられ、女として快楽を貪った。その時は何とも思わなかったが、今考えると自分への嫌悪感ばかりが募る。

「体が女だから、考え方も変わるんだろうか。それとも、もともとの僕にその気があったのか・・・」
今一度、身なりを調べると、制服はきちんと揃っていた。脱がされた下着は奪われたが、替えのショーツを穿いている。しかし、男たちから浴びせられた精液で、べとべとだった。
ブラジャーは着けておらず、乳首がひりひりと痛む。手荒い愛撫を受けたらしい。次に達郎は、持ち物をチェックした。まずは、携帯電話だ。

「携帯には、聡子ちゃんからのメールが一杯だ。心配してくれたんだな」
液晶画面には、着信を知らせるメッセージが幾つもあった。そのほとんどが、さくらを心配する内容である。しかし、中にただ一つ、悪寒の走るような文があった。
『また三人でやろうぜ、さくらちゃん』
そのメールは、さっき届いたばかりだった。あの男たちに違いない。達郎の背に冷たい汗が流れた。
「とりあえず、家へ帰るか」
達郎は公園を出て、タクシーを拾った。もちろん、今は小坂さくらという女子高生なので、帰る先は今朝、聡子から聞いておいた小坂家である。

「運転手さん、ふぐり町の三丁目まで」
「かしこまりました」
聡子の話では、小坂家は成金くさい大きな屋敷に住んでいるという。タクシーに乗る際、さくらの財布を調べたら、四、五万の金が入っていた。それから察するに、小坂家はなかなか裕福な家庭のようだ。
(うまく、さくらになれるといいけど)
父母はもとより、兄弟などもいるかもしれない。今まで男として生きていたために、無作法なところが出てしまう事だってある。そんな時、どうやって窮地を切り抜ければいいのか。
今朝だって、聡子にいきなり素性を疑われている。はっきり言って、達郎には小坂さくらという少女になって、生きていく自信が無かった。

(それにしても──)
タクシーの後部座席で、達郎はスカートの裾を何度も押さえた。そうしないと、丈が短くて太ももが露わになってしまうからだ。
(女の子って、無防備だ。無防備すぎる)
空調の効いた車内で、達郎はいよいよ心許なくなった。誰か助けて。心の中で、そう呟く。

「着きましたよ、お客さん」
ふぐり町三丁目に着いた時、達郎は運転手の言葉も耳に入らぬほど、驚いていた。
「こッ、ここが・・・僕・・・いや、あたしの家?」
確かに、門の所には小坂とある。造りは洋風で、非常にモダンな雰囲気だ。ただ、やたらと大きい。無闇に大きい。街の一角を占めるほどの、大きさなのである。

「ど、どうすればいいんだろう・・・」
タクシーを降りたものの、達郎の足はすくんで、とても家には入れそうにない。完全に気後れしたのだ。それでも突っ立っている訳にもいかず、達郎は呼び鈴を押した。
「どちら様でしょうか」
門扉に設えられたインターフォンから、品の良い女性の声が返ってきた。若い感じだが、しっかりとした意思を持つ、美しい声である。達郎は一呼吸置いて、自分を落ち着かせてから、帰宅を告げた。

「あ、あたしです・・・けど。ただ今、帰りました」
「失礼しました、お嬢様。すぐにお迎えにあがります」
インターフォンが切れ、玄関の方から誰かがやって来た。見れば、メイドのような姿をした、若い女性である。顔は凛々しく、中性的な雰囲気だ。
「お帰りなさいませ」
女性は深々と頭を下げ、達郎をうやうやしく出迎えた。その姿から、さくらと彼女は主従の関係にあると見て良い。おそらく、小坂家に仕える使用人なのだろうと、達郎は踏んだ。

(金持ちっていうのは、本当にいるんだな。メイドを雇っているなんて・・・)
出迎えてくれた女性を見つめる達郎。見たところ、まだ二十歳かそこらで、ちょっぴり吊り目の和風美人である。達郎は思わず見惚れてしまった。

「お嬢様。荷物をお預かりします」
女性は達郎の前に進み出て、カバンを持とうとした。しかし、こんな扱いを受けた事の無い達郎は、つい反射的に身を引いて、
「あ、結構です。自分で持ちますから」
と、答えてしまう。それを見て、女性はきょとんとした顔つきになった。
「・・・お嬢様、いかがなされたのです?」
そう言われて、達郎が身震いした。何か、対応にまずい所があったらしい。

「え?何か、変ですか?」
「ええ・・・いつものお嬢様だったら、カバンなぞ放り投げて、すぐさまお風呂を召されますのに・・・今日は何だか、いつもらしくありませんね」
女性はぐっと顔を近づけ、達郎の姿を舐めるように見回した。メイドという身ゆえ、主の変化に敏感なのかもしれない。達郎は祈る気持ちで、女性の疑いが解けるのを待った。

「・・・お嬢様」
「は、はい。何でしょう・・・」
女性は咳払いをひとつした後、頬を赤らめながら言った。
「殿方とお会いになってきたようですが、その・・・体が匂いますね。すぐにお風呂を召された方が良いと思います。お湯は張ってありますので、どうか・・・」
「あ、そ、そんなに、匂います?」
今度は達郎が頬を赤らめる番だ。どうやら彼女は、達郎が三人の男たちと交わってきた事を見抜いたらしい。あらたまって言われると、それがとてつもなく恥ずかしくなった。

「今日は、旦那様も奥様もお留守ですが、あまりそれと分かるような姿でお帰りになられては困ります。お嬢様の行儀が悪いと、お目付け役のこの私、薙沢佳織までが、旦那様のお叱りを受けるのです。どうか、ご自重なさってください」
「・・・はい。ごめんなさい」
小言を貰って、シュンと小さくなる達郎。こんな事は、学生時代以来だった。年を経ると、自分を怒ってくれる人は、段々と少なくなってくる。まして、身内でもなければ、生活態度云々を注意してくれる人は、皆無に等しい。なので、実を言うと怒られている事が、あまり嫌にならない。と言うよりは、むしろ心地良かった。

(薙沢佳織さんかあ・・・何か、惚れ惚れする女っぷりだよなあ・・・い、いかん!今の僕は女の子なんだ。女が女の人を好きになるなんて・・・)
しかし、達郎の心は浮ついていた。彼女がメイドという事は、同じ屋根の下で寝起きを共にする事である。そう思うと、どことなく気持ちが昂ぶってくる。

「お嬢様、こちらへ。私めもご一緒いたします」
「ああ、それはどうも・・・」
薙沢佳織の案内で、達郎は邸内を歩き出した。しかし、なんと豪奢な造りであろうか。
廊下にはビロードの絨毯が敷いてあり、高そうなアンティークも並べてある。一体、小坂家は何を生業としているのだろう。達郎の興味が募る。

「あの、薙沢さん」
「は?」
名前を呼んだ途端、薙沢佳織の顔が険しくなった。眉をしかめ、首だけを達郎の方に向き直らせる姿は、ちょっとしたホラー風味を醸し出している。
「いつもは、佳織と呼び捨てになさってますのに・・・どうかされたんですか?」
迫る薙沢佳織の表情に、何かを疑うような色が出始めている。彼女は、小坂さくらという少女しか知らない。今の達郎は、外見こそ小坂さくらそのものだが、中身が違う。中は、二十五歳の童貞青年なのである。佳織がおかしいと感じて、当たり前なのだ。

(う、疑われてる・・・マズイな)
佳織から視線を逸らし、口笛を吹く達郎。何か良い言い訳が無いものか。そう思った時、小坂さくらがツチノコに噛まれたという話を思い出した。
「じ、実はね、佳織・・・あたし、今朝ツチノコに噛まれてから、ちょっと記憶が怪しくなっちゃって・・・だから、素行におかしいトコがあるかもしれないけど、許して、ね?」
多少、話に無理はあるが、今のところ他には良い言い訳が無い。達郎は半ばヤケクソになって、佳織を言い含めようとした。すると・・・

「そんな!ま、まさか、私とお嬢様との仲の事も・・・お忘れになったんじゃ・・・」
と、佳織はおののいて、膝を折った。
「へ?何です、それ」
「ああ、やっぱり!だからお嬢様は、男なんかと・・・ううッ・・・」
佳織がさめざめと泣き崩れる。達郎は訳も分からず、彼女の前へ座り込んだ。

「あの・・・佳織。一体、僕・・・じゃなくて、あたしとあなたの間に、何が・・・」
「あ、あなた、ですって?ひどい、お嬢様・・・他ならぬ私の事を忘れるなんて!」
ぎりぎりと歯噛みしながら、達郎を睨む佳織。目には涙を一杯にため、射抜くような視線を寄越している。
「さっきも言ったけど、ツチノコに噛まれて記憶が・・・」
「だったら、思い出させてあげます!」
佳織はずいと立ち上がり、達郎を突き飛ばした。

「わわッ!」
ビロードの絨毯の上を転がり、達郎は仰向けになった。そこへ、佳織がすぐさま覆い被さり、唇を重ねていく。
「んむッ!んんんッ・・・」
達郎は唇を塞がれ、舌を吸われた。次いで、佳織はセーラー服の胸元を侵そうとする。
その動きに躊躇は見られず、達郎はなす術も無く制服を毟り取られていった。

「ああ、お嬢様・・・乳首がこんなに尖って・・・」
佳織はセーラー服の中へ手を伸ばし、生の乳肉の感触を味わう。吊り上がった目を細め、唇を噛み締める表情は淫蕩に歪んでいた。

「か、佳織・・・あたしたち、女同士なのに・・・こんな事って」
「何を言ってるんですか。私めをこの世界に引きずり込んだのは、お嬢様じゃありませんか・・・」
佳織はセーラー服をたくし上げ、チュウチュウと達郎の乳首を吸った。先の男たちとの乱交で、淫らな疼きを知った蕾は、佳織の手遊びによって、再び喜びを得る。

「ああ・・・」
達郎が仰け反った。乱交の際に炊きつけられた官能の残り火が、息を吹き返したように燃え盛る。気がつけば、佳織の指が下着越しの下半身を責めていた。しかし、抵抗は出来そうにない。
「いやッ!お嬢様、これは何ですの?男のザーメンじゃありませんか!」
達郎の女穴に指を差し込んだ佳織が、ヒステリックに叫ぶ。乱交の際、男たちは薄汚い精液をここへ大量に流し込んでいた。事の後、シャワーも浴びなかったので、その残滓が生々しく残っているのだ。

「これは、ペニスの無い私へのあてつけですか?ひどいッ!」
佳織が達郎の両乳首を、力任せにつねり上げた。だが、疼きを持った蕾には、その暴力まがいの行為でさえ、甘い愛撫のように感じる。

「ううん・・・ああ・・・」
「感じてるんですね、お嬢様。憎らしいわ、男に飼い慣らされたのですね」
身悶える達郎を見て、佳織の嗜虐心に火がついた。佳織は立ち上がると、廊下に置いてあるキャンドルスタンドを手に取った。
「お嬢様なんて、こうしてやる!」
達郎のショーツを毟り取り、佳織は男の粘液が滴る女穴へキャンドルスタンドを突っ込んだ。容赦の無い、怒りに任せた行動だった。

「きゃあッ!」
ぐん、と背が反る達郎。スタンドの先は丸まっているが、太さがあるので女穴は目一杯に拡がった。男三人に犯された時とは、また違った感触である。
「あ・・・ああ・・」
ジクジクと女穴が疼いた。腰が抜けて、膝が笑う。おそらく、今、立てと言われても、立つ事は出来ないだろう。それほどの衝撃だった。

「お忘れになったのなら、私が説明して差し上げます。よくお聞きくださいね、お嬢様」
佳織は達郎の女穴に埋められた、キャンドルスタンドを踏みつけながら言った。愛憎が交じり合った顔をしているのは、すべて小坂さくらへの想いなのだろう。涙と笑い。その二つが溶け出し、一つになっていくのを、達郎は見た。

「私の処女を奪い、同性愛者に仕立てたのは、お嬢様、あなたです。あなたが極太バイブで、私を犯したのです」
「ああ──ッ・・・」
達郎の悲鳴が上がった。佳織が踏みつけたキャンドルスタンドは、三十センチほどの全長を、三分の一ほど入れている。
「私が小坂家に飼われる身だというのをいい事に、あなたは私を何度も・・・その上、当時、将来を誓っていた婚約者に、私が旦那様の慰み者になっていると吹聴して・・・それも、お忘れなんですか?」
もう、達郎の意識は半ば飛んでいた。佳織の言葉は、ほとんど聞こえない。

(な、何か、スゴイ事になってきたなあ・・・)
達郎は、小坂さくらという少女の人生に、興味が湧いてきた。ただの、可愛いだけの女子高生ではない。そう思った瞬間、波のような快感が下半身から背中へ抜けていった。女同士で知る、柔らかな絶頂だった。

「達郎さん」
「わッ、びっくりした!」
絶頂を迎えた瞬間、目の前に死神が現れた。まだ別れてから一日も経ってはいないが、随分と久しく感じる。それだけ、今日の達郎には色々な事があった。
「死神さんじゃないですか。どうしたんです?一体」
「達郎さんがイク瞬間、魂をぶっこ抜きました。あの時っていうのは、臨死体験に近いんですよ。ちなみにここは、あの世とこの世の境目。生と死のボーダーラインです」
気がつけば、達郎はぷかぷかと宙に浮いていた。辺りには何の景色も見えず、雲が漂っている。しかも、体は以前の二十五歳、童貞青年の姿に戻っていた。

「実は、不手際がありまして。達郎さん、もう一度体を替えてくれませんか?」
死神は頭を掻きながら、何となく申し訳無さそうに言った。しゃれこうべの顔だが、そんな感じが見て取れる。
「体を替える?どうして?」
「ズバリ言います。スイマセン、間違えました。達郎さんは、まだ死なないんです」
懐から手帳を出した死神は、達郎の名前の所にバッテン印をつけた。

「死ぬのは、烏頭(からすあたま)達郎さんで、鳥頭(とりあたま)達郎さんでは無いんです。辞令がワープロ印刷だったので、読み間違えたんです、私が」
エヘへ、と笑う死神。一応、悪びれているようだ。
「と言う事は、僕は元の体に戻れるんですね」
「そ、それが・・・」
達郎の問いに、口ごもる死神。嫌な予感が、達郎を包む。
それから一年の後の事──

「美由紀」
新しく出来た友人からそう呼ばれて、
「なあに」
と、達郎は答えた。今、達郎は東雲美由紀という名前になっていた。年は十八歳。地元の大学に通っている。達郎は友人から肩を抱かれ、そっとうつむいてみせた。

「食事でもして帰ろうよ」
「いいわよ」
赤い髪と派手なアクセサリー。今の達郎は、どこにでもいる女子大生そのものだった。
ノースリーブから肩を出し、ゆっさりと揺れる乳房が少々重い。しかし、細いウエストは自慢で、むっちりと大きなヒップは自分でもセクシーだと思っている。

「私、今日は車で来たから、送ってってあげる。美由紀ン家まで」
「ありがとう。食事代は、あたしが出すから」
達郎は髪を手で梳き、後れ毛をかいた。隣に居る友人は女子校時代からの親友で、大の仲良しである。

結局、達郎は元の体には戻れなかった。笑い死にした達郎の遺体は、早々と荼毘に付され、この世からオサラバしていたのである。しかし、あの世では達郎の魂を受け入れてはくれない。そこで、死神はこう言った。

「今ですね、達郎さんの魂を入れる事の出来る、空きの体が二つあります。え~・・・お
一人は、一日におならを七十発もひる、ガスタンクと呼ばれる三十二歳の公務員です。
もう一人の方は、十八歳の女子高生で・・・」

またもや二択だった。しかし、今度は迷わなかった。
(女の子って、男よりも楽しいんじゃないか)
そんな思いがあったからだ。今、達郎は名門女子大で、福祉の勉強をしている。

「美由紀、今夜、合コンがあるけど、いく?」
「あたし、パス。この前、ろくな男いなかったし」
「そうだね。今日は女同士、寂しく飲もうか」
「うん。そうしよ」
美由紀という名の達郎は、立ち居振舞いがすっかり女性化していた。今だって、友人と歩く足どりは小幅で、スカートを静かにひるがえしている。声を荒げる事も無くなったし、誰からもおしとやかだと言われていた。

(ああ、人生って楽しいな)
女性になって、最も感じたのはその事だった。飯を食い、服を買う。化粧をして、どの下着を身につけるか、毎日のように悩む。髪を整えるのに、一時間も費やす。友達とカフェで夜更けまで話し込み、たまにナンパ男に誘われたりもする。こんな、若い女性であれば当たり前の生活が、楽しくて仕方が無いのだ。

(この楽しみを知ったら、もう男には戻れないよ)
男だった頃は、どこか殺伐としていた。寄れば女、触れれば女と、何かにつけて女の話が出てくる。そのどれもが下品で、耳に残したくないような話ばかりだった。しかし、女同士ではそんな話は滅多に出ない。ファッションやグルメ、そして、たまに男。異性の話といえば、せいぜいその程度である。

「美由紀、何食べようか」
「そうねえ、フレンチがいいわ」
「あたしもそう思ったところ。やっぱり、気が合うね」
肩を抱かれた達郎は、木陰に隠れて友人と軽くキスをした。女子校出なので、こんな危うい遊びも出来る。また、不思議とそれがいやらしく感じないのだ。
「行こう」
達郎は友人の車に乗り込んだ。近ごろの達郎は、過去を振り返る事が少ない。きっと、そのうち『達郎』という名前すら、忘れてしまうに違いない。

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