シェイク

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――分かっている事とはいえ。
<<シェイク>>による転移後の、自分であって自分でないという、このもどかしいまでの違和感には毎度悩まされ続けている。
状況を把握する為にまずは辺りを見渡した。
首周りが軽い。が、視界はぼやけている。頬を触る肩まで伸びた髪の毛がかゆい。今俺が寝ているベッドの頭の部分に眼鏡が置いてあったのでそれを掛けた。
木製のタンス、テディベアやアクセサリなどの小物類が置かれた棚、勉強机。鏡は見あたらない。広さは大体六畳位だろうか。勉強机に置かれた高校の教科書から、宿主に与えられた一人部屋といった所だと思う。
几帳面な性格なんだろう。部屋は見ていて気持ちが良い位にきっちり片付いている。
さてどうしたものかと下に向けると、メロン大のふたつの何かが服を張り上げている。
そのあまりの大きさに、いつの間にかふとそれに手を伸ばしていた。
別にやらしい気持ちがあった訳ではない。寝起きで頭が回らないのか、<<シェイク>>でいまいち調子が良くないのか、それが何か全く見当がつかなかったのだ。それ位、でかかった。

しかし俺も万年発情中の年頃の童貞な訳で、その気は無くとも一度触れてしまえば、大きくてやわらかな触感の虜となるのもしょうがない事だと思う。そこまで手に力を入れなくても指が吸い込まれ、元々余裕が無かったシャツが張って背中が窮屈になる。
はじめて味わうそれは、マシュマロのような、プリンのような、風船のような、なんとも形容しがたい魅力があるが、もうずっと前から慣れ親しんでいるかのようにしっくりと手に収まる。
その手は――それどころか心臓すらも――直ぐにとめる事となったが。
「起きてるー? まだ出なくて大丈夫なの?」
ふにょふにょとした感触を楽しんでいた矢先、開いた扉からそんな言葉が入り込んできた。どうやら声の主は母親らしい。ベッドの脇の目覚まし時計の短針が八をさしている。
学校か。今日は――からしばらくは――しょうがないだろう。
思わず手の動きが、心臓が、止まった。
やましい事を見られたから、という訳ではない。
事情を説明しようと目を向けた先にあったもの、あるいは続けて出てきた会話の中の宿主の名前らしいものを聞いて、驚愕した。
どうやら、俺は片思い中のあの子のなかに入ってしまったらしい。
理想の人
整理しよう。<<シェイク>>は、どこでも、いつでも起こる珍しくもなんともない意識転移現象で、その範囲は差はあるが平均半径5キロメートル、期間は3日、一回当りの被害者数は範囲内人口の五割ほどと言われている。
この市が面積70キロ位だからここを中心に<<シェイク>>が発生すれば市民の半数以上が他人の身体で生活する事になる。
意識が誰に転移するかはランダムだけど、血縁に転移する事は殆ど無くて、恋人や友達、知り合いなど、何かしらの交流がある人に転移する事が多い。また異性に転移する事も珍しくなく、<<シェイク>>についてはどの国でも研究機関が設けられているほど調べられてはいるが、その法則性はよく分かっていないので様々な与太話が転がっている。
俺の意識は今朝方起きた<<シェイク>>によってあの子の身体に入ってしまったようだ。
以上、整理終わり。

口ぶりから察するに、警報はまだ出ていないんだろう。しかしそう遅くは無い筈だ。
「どうしたの? 具合でも悪いの?」
彼女をそのまま歳を取らせたような母親が、心配そうにこちらを見ている。
大丈夫、あやしんでいる訳ではない。彼女の両親が、どれだけ有名な<<シェイク>>学の研究者であろうと、警報が出てない内から疑心を抱かないだろう。
心臓の鼓動が早くなっている。呼吸が不自然に見えないように、細心の注意を払って対処し、俺は寝巻きであるパジャマを脱いだ。
控えめで真面目な彼女に似合わない巨大な胸、くびれた腰、丸く形の良い尻。乳輪が想像していたよりも大きめでやらしい。生で拝んでみたいと思わないことはなかったが、こういう形で見たかった訳ではなくて、複雑な気分になった。

女に転移するのは初めてで、ブラジャーを着けるのにとまどい、着けた後に違和感を覚え、スカートというのはここまで風通しがよいものなのか妙に感心した。ジーンズに慣れた身としては心許ない無防備さがある。ポケットがあることをはじめて知ったが、はたしてそれに意味はあるのか少し悩む。
着替え終わり、彼女の家を後にした。
全身の汗腺がどっと開いている。それも不思議な事ではない。これから俺は完全犯罪を犯すのだから。

<<シェイク>>によって本来の肉体から離れた意識は、性別も体格も全く異なる他人の身体に入り込んでも拒否反応を起こす事なく(起こされる事なく)適応する。
今自分がしているみたいに、身体を動かし走る事も出来る。朝日を目にして眩しいと思うことも、思考する事も出来る。それらは宿主の身体能力に依存するのだが、どういう訳か記憶や思考パターンは影響を受けない。

かといって肉体と意識が全くの別物かというと、そうでもない。
デジャブは<<シェイク>>で他人の意識が行動した時の残滓だ。おぼろげではなく、<<シェイク>>中の記憶が映画のようにはっきりと残っている事も多々あるという。
元の肉体に意識が戻った時に食べ物や音楽の好みが変わったり、暗い人が明るくなったり、粗野な性格が穏やかになったりすることもある。

俺にはまだ経験はないが、そういった<<シェイク>>による影響は生きていれば必ず通る道なのだという。<<シェイク>>の影響は計り知れない。
転移先の人物と親交を深めたり、結婚をしてしまうケースもそう少なくない事なのだ。
これからの俺の行動は、彼女の肉体に深く刻まれてしまうのか?
自分が味わった事のない体験でPTSDになるという話や、<<シェイク>>時の記憶の断片から犯罪の発覚が分かるという話はフィクションでもノンフィクションでも食傷を起こすほど氾濫していてありふれたネタだ。

けれど、俺の(彼女のといった方が正しいのか?)足は迷う事無く自宅(宿主ではなく俺自身の)に向かっていった。

なんでこんな大それた事をしようとしているのだろう?
たしかに彼女がうっすらとでも思い出すことも無く、これから起こす犯罪が表に出る事もないかもしれない。しかし、そんなうまく行くものなのか?

うだうだと考えている内に、身体は家の玄関先に立っていて、築数十年を経て変形した扉が音を立てないように、遅々とした速度で慎重に横へ滑らした。
都合よく俺の本当の両親は旅行中なので、気をつけるのは自分(当然ながら中身は違うが。しかし中の人などいない事もあり得る。意識だけが飛んで、植物人間状態になることもあるにはあるそうだ)だけでいい。

見慣れた棚からビニール紐と、手拭いを取り出す。スカートのポケットの必要性がここで分かった。
見慣れない風景にまだ戸惑っているだろう俺(の身体)を一部屋一部屋探していく。棚から取り出すついでに見た茶の間の次は、階段を登って自分の部屋へ行った。
がらんとしていて、誰もいない。のだが、布団がベランダに干されていた。
俺の中の人は転移先に迷惑が掛からないようにしてくれている。それなのに、その身体の持ち主である自分はこれから何をするつもりなのか。

事を成す前からこの罪悪感。してもないのに後悔してるなんて、先人の言葉を真っ向から否定しているな。
もしそれを行ったら、し終えたら、罪悪感で死んでしまいそうな気がしてきた。その時は『後悔さらに立つ』とでも遺書を残すか?

これだけ気が進まないのに、自分の身体は悪の道へと着実に前進しているから不思議なもんだ。

それから間もなく俺は俺と対面した。トイレにいた。便座に座っていて、突然の闖入者に驚いているようだった。立ち上がって逃げようとする俺(の肉体)。しかし下ろしジーンズが足をもつらせ、胸に頭突きをかます勢いで顔を埋める形になった。
視界の隅、足元に手拭いが落ちているのが見えた。ぶつかった衝撃で落ちたのだろう。
俺は彼を押さえ込んでビニール紐で素早く両手を結び、手拭いを拾って目隠しをさせた。
顔を見られた後で目隠ししても遅いかもしれないが、一瞬だったし万に一つという事もある。覚えてない事を祈ろう。
胸が痛い。この痛みは頭突きされたからだけではない気がする。

初めてながらもうまく事を運べたのは、相手が混乱していただけでなく、こうする事を何度も夢に見たからだと思う。
自分が今借りている彼女を、今と同じようにして自由を奪って何度も何度も犯す夢を見たことがあった。童貞で味わった事も無いのに、夢の中で感じた肉感は目覚めた後もやけにハッキリ残っていて、気持ちが悪い位だった。

なんなんだと事態を把握できず騒ぐ彼を部屋まで引きずり、ベッドに寝かせた。
下はずり落ちたままで、さすが自分の身体、さっき胸との接触でナニをびんびんに立たせている。節操の無さになさけなくなった。
「ごめんなさい、事故にでもあったと思って諦めてください」
知らずにこぼれたこの言葉は、俺の身体の中の人に対してなのか、それとも彼女に対してなのか。とにかく、止めるという選択肢は頭に無かったのは確かなんだが。

とりあえず俺は、着ているものを脱いだ。最初からブラのサイズが合ってなかったんだが、立った乳首のお陰でなおさら窮屈になってしまい痛かったからだ。罪悪感やこれから先への不安を感じるだけでなく、正直言って、興奮していた。

ブラを取ると案の定、白い肌に赤い跡がついてしまっている。物理的には開放感があるが、精神的に胸は苦しいままだった。心臓がどくどくと脈打ち呼吸が荒いのが分かる。
どうせだから下も脱いだ。
陰毛が薄かったので、薄茶色ともピンクとも表現できる少しはみ出た具が丸見えだった。
いや、こんなもんだよなと思いつつもショックを隠せなかった。

彼の上に乗り、腰を下ろす。が、うまく入らず、ナニに手を添えてやるも濡れてないからか、痛くて中に挿れる事は無理だった。
しかたないので自分でいじる事にする。指の腹で陰部をなぞっていく。気持ちいいというより、むず痒いような微妙な感じだったので、あいている手で胸も撫でる。
やらしく実った双房や陰部を見ているだけでも結構興奮してくる。
そういえば、女は視覚的刺激よりも雰囲気重視だとなんかで見た覚えがあるけれど、こういう場合はどうなるんだ?
変な状況だ。自分の身体を見て興奮している構図になるのか。まあいいや。
彼女の胸に細い指を這わせ、乳輪に到着する。直ぐには乳首には触れずその周りを焦らすように触っていく。青年向けマンガで学んだテクニックだ。あれが話題に上がると、時折出てくる統計は一体どっから仕入れてくるんだという疑問に必ず落ち着くのが最大の疑問だと個人的に思っている。

いよいよ乳首を摘んでみると、電気が走ったようにびくっと刺激が来た。
「うおっ」
思わず漏れた声は、彼女の口から出てくるとオッサンくささを微塵も感じさせなかった。

乳首をいじっている内にコツというか、大体どうすれば気持ちいいのか分かってくるようになった。力の加減を間違えると痛い事になるようだ。調節しながら引っ張ったり、指で弾いたりする。
「はあ……あんっ、きもちいい……」
自分で声を出しているのに、別人が言っているように思えるから面白い。
「わたしは……普段、まじめな顔して授業を受けてますが……勉強よりも、おっぱいいじる方が好きです」
彼女が一生言わないであろうセリフを喋った。陰部を撫でていた手が、ぷくっと少し膨らみを感じるようになり、そこをいじると乳首を触るのと同じ位気持ち良い。これがクリトリスなのか?
「えっちな言葉を自分で言って、クリトリスを勃起させちゃう、変態です」
あからさまな言葉は萎えるかもしれないと思ったが、彼女の声で言われるだけでそんな事は不思議と気にならない。
「あむ……ほうやって……じゅるっ……乳首をちゅうちゅうできちゃうくらい、牛みたいに大きくていやらしいおっぱいをつけた雌牛です」
乳首を顎の上まで持っていき口に咥える。大きな胸が伸びて少し痛い。
彼女の乳首は硬く張り詰めていて舌で押しても反発力がすごくて倒れない。別に母乳が出る訳でも、出たとしてもそんな事はないだろうけど、甘い匂いと味が口の中に広がっていた。

気づけば陰部もくちゅくちゅと水気を帯びた音を立てるようになっていき、指を挿し込んでいた。指をきつく締め付けられ、鬱血しそうだ。
「んんっ……ふぅ、ひゃあっ……うう……」
膣内をほぐすようにかき回している内に、自分が意識して無くても喘ぎ声が漏れるようになった。
俺は、もし彼女とこういう事をするとなった時にしたいと思っていた事を一通りやった。
オナニーを終えた時の、あのなんともいえないむなしさにも似た感傷が襲っていたが無視してやり通した。

さあ後はもう入れるだけとなって、ふと、彼女は初めてなのだろうかという疑問が今頃になって頭に過ぎった。
処女ならば血が出るだろうし、激しい痛みは<<シェイク>>後の本来の肉体に戻った時にも残ってしまうのではないだろうか。彼女が将来、他の誰かと行為に及んだ時に血が出なくて不思議に思うかもしれない。
処女であった場合のリスクは大きい。彼女がそうでない事を祈りながら、だけど、そうであってほしいという童貞丸出しの幼稚な願望も持ち合わせていた。

もう一度ナニを手で触れて陰部に持っていく。さっきとは違いすんなりと入った。
感じたのは自分の身体の中に別の何かが入っているという異物感のみで、痛みなんてどこにもなかった。これっぽっちも。

当然だ。彼女はどう控えめに見ても可愛い。ビューティフォー過ぎる。今まで彼氏の一人や二人いたことだろう。今時の高校生なら付き合えばそりゃあヤったりもすんだろうよ。今まさに誰かと付き合っていて、サカっている最中かもしれない。
別に、不思議なことじゃない。そう落胆する事も無い。
ナニは彼女の膣内にビックリする位ぴったりと納まっている。
「しっかり咥え込んだおちんちんを、今からわたしのおまんこでシコシコして童貞のくっさい精液を出させてあげようと思います」
腰を浮かしナニを入り口まで抜く。彼女の中が蠢いて、ひだがナニを離さないように絡みついた。
そういえば、と度忘れしていたみたいに一つ思い出した。
考えてみたら、夢でこそ見れ、彼女をおかずに自慰した事は無かったんだよな。

「ふううぅぅんっ! あなたのおちんちんは……ああっ……今までの誰よりも大きくて、わたしのおまんこも、このように、ぴくぴく喜んでいます」
家庭科で同じ班になって喜んだり。席替えで斜め前に彼女が来て、授業中も彼女を眺め続けたり。
「声、とめらんない……おまんこ気持ちよすぎて……声でちゃいます……」
けっこう勇気出して挨拶したら、彼女からも返ってきて、それが日課になったり。
「彼氏よりも、太くてっ……あひぃっ……おなかえぐられて、おちんちんおいしいっ」
冬、目が悪い彼女が前列のストーブ近くに座って、普段はきちんとノート取っている彼女がたまに暑さにやられて寝てしまっているのを見て勝手に親しみを覚えたり。
「はあ……はあ、童貞なのに……すごい……」
春が来て、また彼女と同じクラスになれる事を祈ったり。違う組になって沈んだり。
「こんなかたい、おちんちん、はじめてですっ」
たまに廊下ですれ違って、凝視しちゃって、後で変に思われていないかうな垂れたり。
そんなもんだった。そんなもんで、良かったんだ。

ささやかな、小学生みたいなことで一喜一憂している間に、彼女は勉強もして、恋もして、愛する誰かの胸に抱かれて。
「ふうっ……えぐっ……うえ……」
視界が歪んだ。勝手に目頭が熱くなった。
「ずずっ、ずーっ……ひぐっ……ずずーっ」
鼻をすすっても、すすっても。目をぬぐっても、ぬぐっても全然止まりそうにない。
「好きです。好きです、すげー好きだ」
激しく腰を上下する。ぐちゅぐちゅと湿った音がもっと大きく響くように。
「好きだ……ちくしょ……好きだ……」
その内、びくびくとナニが脈を打ち、果てた。なか一杯にどろどろとした液体が注がれて、やがて力なく抜け落ちた。萎びたそれはあまりにもみすぼらしかった。

風呂を借りて(自分の家だが)シャワーを浴びる。精液が残らないように膣を洗い流す。ここまで来る途中コンビニはあったが、カメラを恐れてコンドームは買いに行けなかった。
今思うと、違うのかもしれない。俺は彼女がコンドームを買う姿なんて見たくなかったんだ。彼女がそれを使う姿なんて想像したくもなかったんだ。
調査されたらどうなるか分からないが、とにかく念入りに洗い流した。

着替え終わり自室で着替え、男の手首の紐を緩める。しばらくもがいていれば解けるだろう。
「ごめんなさい」
始める前と同じように謝って家を出た。
今度は誰に謝ったのだろう。俺の中の人に対してなのか、彼女に対してなのか。それとも、知りたくもないことを知ってしまった自分自身にか。
気をつけている余裕はもう無かったので、玄関はけたたましく音を立てた。

俺は走った。むしょうに、走りたい気分になったのだ。
大きな胸が弾み、痛さと息苦しさからすぐに止めた。

休もうと思い、近くの公園のブランコに腰かけた。未だに涙も鼻水も止まらない。半袖のシャツなので拭くのには役に立たない。
何かないか探してみるとポケットの中に手拭いが入っていた。

さて、この後どうしようか。この先どうなるんだろうか。
彼女の家に戻るにも、警報から随分と経っているだろうから今帰ったところで怪しまれるだけだ。かといって帰らないのも同じことだ。もしかしたら捜索願が出ているかもしれない。
<<シェイク>>による犯罪増加は(特に性犯罪が多くなる事も)統計的事実だからだ。
けれど、そういった事ももう、どうでもいい気がする。

指を鼻の下に持っていき、さっき見つけた手拭いの上に字を書いた。
後悔さらに立つ。
ナメクジが這った後のようにほぼ透明なその字は滲んでいておそらく本人以外には解読不可能だろう。

ゴミ箱に手拭いを捨て、彼女の家に帰ることにした。気づいたら見知らぬ土地にいて、彼女が戸惑わないように。

許される訳ではないけど、少しでも罪滅ぼしをしたかった。もう、とてつもないくらいに掛けてはいるが、迷惑は掛けたくなかった。
俺の中の人ほど模範的な寄生者にはなれっこないが、少しだけでも彼女に負担を掛けないように。
どんなに理想と違っていても、彼女が俺の好きな人であることに変わりはないのだ。

歩きながら、俺はただただ<<シェイク>>が終わってくれる事を願った。
そして、<<シェイク>>中に意識が入ってない抜け殻が出来てしまう事があるように、そのまま意識が自分の身体に戻らずにここではないどこかへ行ってしまう事だけを、ただただ、願い続けた。

<<シェイク>>が終わり、とにかく私は走る事にしました。
彼にどうやって説明するか、頭で整理しながら足を動かしました。

意識転移現象にまつわる与太話で、こんなものがあります。
聞いた事があるかも知れませんが、曰く、<<シェイク>>は新しいコミュニケーションの手段であり、他者を理解し、特に子孫を増やす為の合理的な方法であると。
転移先に血縁者が選ばれる事が少ない事、この現象によって深い友好関係や恋愛関係が育まれる事。この間中は性犯罪が増加する事。
これはあなたもご存知の事実ですが、これらの説明も<<シェイク>>が前述の通りなら、つくだろうという事です。
あるいは元々の意思の伝達方法だったのではないかともあります。書き言葉ができる前、話し言葉もできる前、古代の人間はどうやって意志の疎通を図っていたのか。それは意識転移現象のように、自分の意識を他者に転移させる事で自分の意見を他者に伝えた、という説です。
自由自在に<<シェイク>>が出来なくなったから人はボディランゲージを作り、口語表現を行うようになり、モノに書き記す事で知識を後世に残したという訳です。これが事実だと今度は、何故テレパシーが出来なくなったかの理由説明が必要になりますが。

……この与太話はいらないかもしれません。保留しましょう。

ご存知の通り、私の両親は<<シェイク>>の研究者です。これの法則性は掴めていませんが、世間に発表されてないだけで、多くの事実が分かってきてはいるのです。
『いつ』はまだですが、『誰が』『誰に』はある程度特定、操作できるようになって来ています。
そしてこの現象中の他人が行った記憶は、デジャブとしておぼろげに残ることもあれば、映画のようにはっきりと残る事もあるんです。
そして意識転移現象はその度合いはともかくとして、人の思考回路を確実に変容させるのです。

あなたが夢に見たという、その、私を何度も何度も、えと、抱き続けるというそれは、実のところ、本当に起こった事実なのです。
その時の『あなたの中の人』は、私でした。
あなたが私に言わせたように、いや正しくは、私の身体の中に入っている時に言ったように、誠に恥ずかしい事に、私は変態なのかもしれません。いや多分そうなのでしょう。

あなたが好きで好きで好きで好きで、一年の頃、あなたに朝声を掛けられる事だけを楽しみに学校へ行き、あなたと別々のクラスになった二年、三年は廊下であなたの姿を見かける為だけに学校へ行きました。
けれど私はそれだけでは我慢できませんでした。
両親の研究結果をほんの少しだけ個人利用して『あなたの中の人』となった私は、本来の私の家にその足で赴いて、私の身体の自由を奪って手首を縛り目隠しをさせて思う存分私の身体を抱きました。これを変態と言わずしてなんといいましょう。大変な変態です。
『私の中の人』はトラウマとならないように、これまた研究を個人利用して記憶操作を行ったので大丈夫です。

考えていなかったのが、あなたのアフターケアでした。意識が無いとはいえ、あなたに、その、初めてを捧げて、報われない想いにむなしさを感じながらも浮かれ気分だった私は最後のツメを誤りました。

この経験があなたの肉体の方の記憶に残ってしまって、それが夢となって現れているとは予想もしなかったのです。
夢となって鬱積したあなたの想いは、今回の<<シェイク>>で『私の中の人』となった為に爆発してしまいました。
自制心の強いあなたの身体から、我慢足らずの私の身体に移ってしまったあなたは、鬱憤を抑えきれなくなり、自分の欲望を満たす為に自分の家に戻りました。
意識と肉体の剥離はおそらくこれが原因でしょう。

その時私は、また『あなたの中の人』となることが出来たので、勝手しったる他人の家、着替えをすまし、準備を済ませた後、あなたが<<シェイク>>後に困らないようにと少し部屋を掃除させてもらって布団を干しておきました。
私の家に向かう前に、あなたの、その、男性器、に学術的興味が湧いたのでトイレで少し研究をしていたのですが、それが間違いでした。いきなり扉が開き、私の姿をした誰かがそこに立っているではありませんか。
混乱して立ち上がろうとして転んでしまい、あなたといえば良いか私のといえば良いか分かりませんが、胸に飛び込む形になってしまいましたが、あなたが気に病むことはありませんでした。それが原因ではなく、もともとぼ、勃起していましたから、だから、その大丈夫です。変態なのは私だけです。
ちなみに、その時にズボンから落ちた手拭いを、多少動揺していたあなたが自分で持ってきたものと間違えてしまったので、馴染みの薄いスカートのポケットにしまっておいた手拭いは公園まで使われずじまいとなりました。

あなたに犯されている時、恐怖心はありませんでした。手口が私の用いたものと同じでしたから、あなたの記憶に変な風に残ってしまった事を理解し、中の人はあなたに違いないという確信がありましたから。
そこで事情を説明すれば良かったのですが、私の口から飛び出してきた淫らな言葉に圧倒されてしまい、思考が飛んでしまいました。
先程言ったとおり、十中八九あなたが中の人だと思っていましたから、あのセリフ群は私があなたに言葉責めをされているのと変わりありません。
自分が、その、おちん、いえ、性器の名称を恥ずかしげも無く連呼している錯覚して恥ずかしくもあり、あなたに言わされているかと思うと、興奮して何も考えられなくなってしまいました。

<<シェイク>>が終わり、自分の身体に戻ってみると更にびっくりする事がありました。
あなたの考えていた事をはっきりと、自分の事のように覚えているのです。
まず私はあなたと両想いだった事に感激しました。正直、小躍りしたい気分です。
そして、間違いはやはり訂正しないといけないと思いました。
残念ながら、私はあなたが想っているほど大人しくも真面目でもないのです。ピンク色の妄想でいっぱいの変態なのです。
けれど、きっとなんとかなる気がするんです。あなたはどう思います?

……こんなところで、いいのではないでしょうか? 頭の中でも詰まる箇所があったので、きっと口頭なら恥ずかしすぎてもっとつっかえつっかえになってしまうでしょう。

こんな時、<<シェイク>>が起こってくれれば簡単に伝えられるのにと考えてしまいます。
けれど、こういうのは自分の口から言った方が嬉しいに決まっているのです。
二年前の朝、あなたが勇気を出して声を掛けてくれたように。
今度は、私から。

胸が痛いです。この痛みは運動不足の人間が走ったからではきっと無いのだと、私は思うのです。

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