「オリジナル」の記事一覧

七夕の晩に……

「はい、ちゃんと背を伸ばして」 「姉ちゃん、もういいって」 鈴が口を尖らせて抗議するが、長い髪をカタツムリの殻のような形にくるくるっと巻き上げて頭の上で止めている有沙は、『妹』の言葉を笑って受け流す。 「ダメよ。 去年のこと、忘れたの?」 「はうぅっ……」 去年の同じ七夕祭りの『惨事』を思い出して、鈴(りん) は硬直する。 なにしろ、ブラジャー無しで浴衣を着て七夕祭りに連れ出され、

sense

Pi、Pi、Pi、Pi―― 「う……ん…………」 枕元で鳴り響く耳障りな電子音は、否応なく微睡みにたゆたっていた意識を現世へと引き戻す。 すっぽり潜った布団から伸ばした爪先が、 カツン―― 硬いモノに当たり乾いた音を小さく発てる。 爪を伝わって感じる微かな衝撃。そのまま掴み布団の中に引きずり込むと、手探りにスイッチを押さえた。 再び訪れた静寂中、布団越しに感じる朝日に気怠げに重い

皮一夜

「ほら、どんなもんだ?」 言葉もない研崎の前でその美女は生まれたままの姿を晒し、ボリューム感のある胸を自ら水風船でも弄ぶようにこね回していた。 「遠慮しないで触ってみろよ。 やーらけーぜ」 「…………」 「なんだよ、魂抜かれたみたいな顔しちゃって。 しょうがねえなぁ」 美女はただでさえ形良く盛り上がっている胸のふくらみをさらに前方に突き出すようにして研崎に近づいた。 「ほうら、ほう

ノウブル・ガール

そのメス犬は、人間だった頃の夢を見ていた。 まだ自分が敬介という名前の人間だった頃の夢を。 恋人の有紀と笑い合いながらキャンパスの並木道を歩いてた頃の夢を。 有紀を抱きしめたと思ったとき、腕の中から有紀は消えていた。 そこで夢は途切れた。 夢のあとには現実が待ち受けていた。 薄暗く臭気に満ちた部屋に敬介は一人でいた。 現実では敬介は一匹のメス犬だった。 水で膨らませた風船のように肥

ノウブルズ

西暦20XX年。 地球上に生まれた新人類“ノウブル”たちは旧人類の上に君臨した。 世界人口の0.01%に満たないノウブルたちが、残りの人間たちを支配したのである。 「おいで、敬介」 手招きをする香織の口調は、すっかりノウブルのそれになっていた。 敬介は無表情で香織の前に進み出た。 香織は三年前、敬介の前から連れ去られた。 ノウブルとしての資質が遅れて発現したためだ。 一夜にして
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